<小言航兵衛>

ヒトラーを生むのは誰か

 この1週間ほど、日本を留守にしていた。その間、日本のテレビや新聞を見る機会もなく、したがってテレビを見ながら小言をいう必要もなくて、精神衛生にも良かったが、戻ってきて1週間分の新聞を読み返して、やはり小言をいわざるを得なくなった。

 ひとつは、名古屋で再選された市長に対し、民主党の幹部が「あれはヒトラーのような独裁者だ」などと嫌みを云っていること。大衆を煽り立てて、自分の思う方へ引っ張ってゆくやり方をヒットラーにたとえたようだが、それをいうなら毛沢東にたとえる方がよほど適切ではないか。毛だって同じような独裁者として人民を扇動し、文化大革命を起こして、ナチスによるホロコースト以上の6,500万人を虐殺し、文化遺産を破壊しつくしている。それに民主党にとっても、身近な存在だろうに。 

 もうひとつは菅首相が蔵相に対し、社会保障と消費税の改革を「死ぬ気でやれ」といったとか。彼らは税制の「改革」などというが、内実は税金を上げることであろう。そんな悪政を「死ぬ気」でやられたのでは国民の方が死んでしまう。 

 そのうえ、ここで改革という言葉を使うのはおかしい。改革とは、旧態依然たる悪弊を改めるようなときにいう言葉で、増税は改革ならぬ「改悪」である。にもかかわらず新聞やテレビまでが改革という言葉を使っているのは、今の記者連中の言語感覚が余程マヒしているからだろう。マヒしてないのであれば、国民の目をくらます民主党の宣伝に荷担しているからにほかならない。これを一般に「確信犯」という。

 権力者が改革などという言葉をつかっても、それを報道する記者たちは客観的な表現を使うべきである。

 言いたいことの3つ目は小沢問題に対する菅首相の言動である。とくに「幹事長を中心に……」というところが情けない。なぜ党のトップたる自分自身を中心に解決しないのか。そんな逃げ腰では小沢に見透かされ、だから云うことをきかない結果となり、事態の解決ができないのである。

 党内のごたごたも解決できずに、国内外のごたごたが解決できよう筈がない。経済は浮揚せず、領土問題は中国やロシアに攻めこまれるばかりで、こんな閉塞状態だからこそ、名古屋市長が再選されたのである。

 ヒトラーは、こうした陰鬱な抑えこまれたような状態から生まれ出るものであり、民主党は今その状態をつくり出しつつあることを自覚すべきである。

(小言航兵衛、2011.2.11)

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