<小言航兵衛>

彼らが日本を滅ぼす

 佐々淳行『彼らが日本を滅ぼす』(幻冬舎、2011年1月30日刊)は、傘寿(80歳)の著者が血を吐くような気迫で日本国の危機を訴えた本である。

 国家の危機管理を長年にわたって実践してきた経験を踏まえ、今の日本が危機管理能力を失った実状を明らかにすると共に、現政権が意図的に崩壊の道へ踏みこもうとしていることを説く。読むものは背筋の寒くなるのを覚えるであろう。

 阪神淡路大震災の当時も、同じ社会党系の首相が危機管理能力の脆弱ぶりを露呈して、国民の怒りと失望を買った。しかし、あのときはまだ地震という自然現象が相手であり、問題は国内に限られていた。しかし尖閣諸島における中国漁船の体当たり問題は、スキあらば日本をおとしめ、領土を簒奪せんとする悪意ある国が相手である。

 逮捕した船長を釈放すれば、それで事は収まるという民主党政府の幼稚なご都合主義的判断もさることながら、図に乗った相手は謝罪と賠償を要求してくるという事態を招いた。しかし、これが単に「幼稚な判断」というだけではすまされないことを日本国民としては知っておかねばならない。

 今の民主党幹部や閣僚がいかなる徒輩によって構成されているか。実は航兵衛もよく知らなかったのだが、本書はそのあたりを以下のように明解に示してくれる。(なお、本書では人物名に敬称をつけているが、本頁では略すことにする)

 まず菅直人だが、第2次反安保闘争の学園紛争花盛りの当時、闘争委員長として学生たちをあおり立てるアジテーターであった。しかし警察に検挙されたことは一度もない。というのはデモ行進に当たっては4列目より後にいて、逃げ足が速かったからである。政権を取った後の民主党にあっても、なかなか先頭に立たず、鳩山、小沢がつまづいた途端に躍り出て、総理となった。とはいえ小沢問題の処理にしても「岡田幹事長にまかせてある」などと、優柔不断で影の薄いことには変わりがない。

 仙石由人は全共闘あがりの権力主義者。自衛隊を「暴力装置」と呼び、海上保安庁は「武器を持った集団」と呼んだが、これは1970年代当時の過激派集団や「赤旗」が警察の機動隊を「公的暴力装置」と呼んだ記憶が刷り込まれているためである。こういうゆがんだ認識をもつ政治家が内閣官房長官という要職に就いていたのだ。

 次いで輿石東は日教組のボスとして、戦後の青少年教育をゆがませた人物。

 法務大臣となった千葉景子は、人権派の左翼弁護士で死刑廃止論者。北朝鮮の拉致主犯格として韓国で死刑判決を受けたシンガンスなどの「在日韓国人政治犯釈放要望書」に菅と共に署名している。そして菅直人の昔からの同志だったせいか、選挙に落選した後も法務大臣として居すわり続け、辞任にあたってはイタチの最後っ屁のように死刑を執行し、それを見物した。

 国家公安委員長の岡崎トミ子は、韓国の従軍慰安婦と一緒になってソウルの日本大使館前で拳(こぶし)を振り上げ、賠償を要求した反日議員。ソウルでの送迎には日本大使館が公用車を提供したというから、外務省も何を考えているのか。

 柳田稔は広島の大企業で組合活動に従事、「労組丸抱え」で当選してきた男で、「個別の案件にはお答えを差し控えます」と「法と証拠にもとづいて適切にやっております」という二つの呪文を唱えていれば法務大臣がつとまると発言してクビになった無知・軽率な政治家。

 そして環境相の松本龍は部落解放同盟の副委員長。

 以下、もっといろいろな人物について書いてあるが、いちいち取り上げるのも腹立たしい。ともかくも民主党は破壊を得意とする極左過激派の全共闘が基本であり、菅内閣は一種の人民戦線にほかならない。

 こうした徒党をあやつる小沢一郎は、おのれの権力拡大のために、彼らの思想信条にかかわらず、その上に乗っかってムチをふるう。日教組だろうとハナクソだろうと、利用できるものは何でも手もとに引き寄せ、そのことが如何に大きな害毒と悪臭を今の日本に流しているか。そんなことはお構いなしに、すべてを無視して利権と蓄財に走り続ける。

 鳩山由紀夫に至っては、論じるも阿呆らしいことながら、まさに「大富豪のバカ息子」と著者は切って捨てる。首相の当時、安保条約第5条(共同防衛)が尖閣列島に適用されるかどうか「アメリカに聞いてみる」と重大失言をした。

 つい先日も、わざわざ沖縄の新聞に対し、米海兵隊の沖縄駐留について「抑止力と言ったのは方便」と語って、大方の怒りと顰蹙(ひんしゅく)を買った。こんな妄言を聞くために、沖縄の新聞も何故わざわざ東京までくるのか。もはや過去の人である。放っておけばいいではないか。

 このような確信犯とバカの集団が政権を簒奪し、今の日本を統治しているのだ。確信犯の「確信」とはむろん「親・中露鮮」で、尖閣諸島も北方領土も拉致被害者も、どうぞ差し上げます。いずれは日米同盟を破棄して、中国、ロシア、北朝鮮と同盟を結び、中国を盟主として、その属国になりたいというのが、彼ら旧社会党、転向全共闘、労組幹部による「変成的左翼政権」のめざすところなのだ。

 日本が滅ぶ前に、彼らを滅ぼさねばならない。

(小言航兵衛、2011.2.17)

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