<小言航兵衛>

国民の負託

 先日の内閣改造で、森本敏氏が防衛大臣に任じられたのは、航兵衛、欣快に堪えない。前任の2人が両方ともに箸にも棒にもかからぬようなデクの棒衛大臣だったから、ここで知的な人物に変わったのはまことに喜ばしいことである。

 しかも防大出身というから、押しも押されもせぬ専門家であって、若いときから心身ともに鍛えてきた人物に違いない。航兵衛も防大出の友人を何人か知っているが、いずれも信頼するに足る立派な人物ばかりである。彼らは単に軍事とか戦略とか戦術とかを知っているばかりでなく、妙な小細工をしない、男らしい男たちだ。新しい防衛大臣もおそらく同じような人柄ではないかと期待するゆえんである。

 しかるに何たることか。野党はもとより与党の中にも、森本氏が代議士ではないというので、「国民の負託」を受けていないものに国防をまかせるわけにはゆかぬなどと大仰な口説(くぜつ)をなすヤカラが出てきた。その中には兵器オタクで知られた代議士もいるが、生兵法は怪我のもとである。

 君たち、代議士は国民の負託を受けてきたようなことをいうが、その実態は何なのか。日教組や労働組合や宗教団体や農協や業界や、ほとんどが利権がらみの団体や企業の「負託」を受けて当選してきたのではないのか。中にはシナか朝鮮か、外国民の負託を受けてきたようなやつもいて、それらが内外入り乱れ、利権だけを求めて、みにくい足の引っ張り合いをしているのが今の政治屋どもである。

 現に電力会社の負託を受けた政治屋どもは、なんとかして原発の再開を画策するし、首相みずからも「財務省の負託」を受けて、増税に政治生命を賭けるなどとほざいている。増税に命をかけるなどは狂ったとしかいいようがない。どうせかけるなら、政治生命ではなくて身体生命をかけるべきで、政治生命などは口先だけの意味不明な言いぐさにすぎない。第一、税金を上げるなどという莫迦げたことに命をかけて貰いたいなど誰も思っちゃいない。

 そもそも、増税に生命をかけて成功した政治屋がこれまでいただろうか。つまらんことに命をかけても国民を巻き添えにしたままのたれ死にをするだけで、これならば身体生命を賭けたことになるが、道連れになる国民の方こそいい迷惑だ。


福島第1原発の水素爆発
不思議なことに、煙の格好は
悪魔が立ち上がって、こっちを振り返ったように見える。

 いったい全体お前さんらは何のために政治の舞台に上がってきたのか。マニフェストと称する台本を放り出して、それとは全く逆の猿芝居を演じているようだが、国民の負託はどこへ行ってしまったのか。

 国民は、そんな茶番など観たくもない。大根役者どもは早いとこ舞台から去ってもらおう。防衛大臣の負託を問える政治家なんぞどこにも見あたらぬではないか。

(小言航兵衛、2012.6.7)


猿芝居

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