<小言航兵衛>

虚偽の言説

 『国を売る人びと――日本人を不幸にしているのは誰か』(渡部昇一・林道義・八木秀次、PHP研究所)という本が出たのは2000年7月であった。以後、この本をきっかけとして最近10年ほどの間に次のような憂国と憤激の書が順次刊行された。

  • 『日本を貶(おとし)める人々――「愛国の徒」を装う「売国の輩」を撃つ』(2004年)
  • 『日本を蝕(むしば)む人々――平成の国賊を名指しで糺(ただ)す』(2005年)
  • 『日本を虐(しいた)げる人々――偽りの歴史で国を売る徒輩を名指しで糺す』(2006年)
  • 『日本を弑(しい)する人々――国を危うくするする偽善者を名指しで糺す』(2008年)
  • 『日本を讒(ざん)する人々――不作為の「現実主義」に堕した徒輩を名指しで糺す』(2009年)
  • 『日本を誣(し)いる人々――祖国を売り渡す徒輩を名指しで糺す』(2011年)

 いずれも当初の「国を売る人びと」と同じく、渡部昇一と八木秀次がホストとなり、各巻ごとに1人ずつ屋山太郎、呉善花、金美齢、稲田朋美、松浦光修といったジャーナリストや学者などのゲストを招いて話し合う鼎談で、政治家、学者、官僚、文化人などの中から国を危うくする思想をもって活動している人々の実態をあぶり出してゆく。

 そして今年は『日本を嵌(は)める人々――わが国の再生を阻む虚偽の言説を撃つ』(渡部昇一・潮匡人・八木秀次、PHP研究所、2013年9月25日刊)が出版された。

 ここでは、その嵌める人々の中から「日本を裏切る売国政治家」や官僚、学者などを見てゆくことにしよう。 

 鳩山由紀夫――今年6月、香港のテレビで中国政府にすり寄り、尖閣諸島は「中国側から『日本が盗んだ』と思われても仕方がない」と発言した。しかも、その後、虚構の「南京大虐殺記念館」に行って謝罪するなど、万死に値するふるまいを見せている。この2件に限らず、この男のさまざまな言動は首相在任中を含めて国家法益を侵害する「国賊」の所業というべきだろう。

 野中広務――尖閣問題を棚上げにして日中関係の正常化を決めたという説明を、当時の田中総理から聞いたと称する。したがって自分は「生き証人だ」と今年6月、中国共産党序列5位の劉雲山書記に語り、BS朝日テレビでは「日本人は戦争の反省が足りない」「愚かな道を歩もうとしている」などと安倍政権を批判した。ところが中国は棚上げどころか、1992年の領海法でわざわざ尖閣諸島を自国領と記載し、自ら棚上げを放棄してしまった。反省が足りないのは日本人ではなくて、無知な野中本人ではないか。

 村山富市――今年1月訪中し、唐家セン元外相と会い、いわゆる「村山談話」を再確認、すぐさま中国の新聞などに「良識ある政治家」と持ち上げられ、「安倍政権は歴史を直視し、……誠意ある行動を」などと利用された。

 加藤紘一――上の村山訪中に同行し、帰国後は安倍政権について「右バネききすぎ」と批判している。これは中国におもねり、祖国を裏切る2度目の「加藤の乱」というべきだろう。初回「加藤の乱」当時のみっともない泣きっ面が想起される。

 丹羽宇一郎――在中国大使をやめた後、文芸春秋、BS朝日テレビ、毎日新聞などで石原都知事の尖閣購入発言を批判し、日本国民は自衛隊の尖閣出動を「絶対に許してはいけない」などと発言、日本の国益を損ね、中国の国益を増大させ、外務省設置法に違反する言動を続けている。大使在任中も、2012年のことだが、自分の乗った公用車が北京市内を走行中、中国人の男が車の前についていた日本の国旗を奪って逃げた事件がある。おめおめと国旗を奪われて平然としているようだが、明治天皇の崩御に際して乃木将軍がなぜ殉死したか、この男は知っているのか。

 そのほか尖閣・竹島問題について「アメリカ陰謀論」を振りまく孫崎亮や寺島実郎、女学生のスカートの中を手鏡で覗いたり電車内で痴漢行為をしたりの植草秀一、慰安婦問題で韓国をつけあがらせた河野洋平、南京問題をあおり立てた本多勝一(自分では京都大学卒というが卒業生名簿には名前がない)、そして東京裁判を肯定する小和田恆など、まだまだ沢山の日本を嵌める人々が虚偽の言説を弄している。詳しくは本書を読んで貰うのがいいだろう。

 このような売国的言説は市井の庶民が床屋政談や飲み屋放言で発しても、さして問題はない。ところが社会的地位のある人士が、おのれの立場を顧みず、外国メディアや放送、新聞などの公的メディアを利用して発するのは、日本人として如何なる魂胆によるものか。影響が大きいだけに、航兵衛としても甚だ理解しがたいところであり、また義憤に堪えないところである。

 ところで、昨夜のうちに以上を書き終わり、今朝になって朝日新聞を見ると<立憲主義「確保されぬなら亡命」>という3段抜きの表題が目に入った。南米か中国の話かと思って読んでゆくと、日本国憲法の解釈をめぐる5日の討論会で、民主党の枝野幸男が議論に負けたせいか「もし、この国で立憲主義が確保されないならば亡命する」と発言したらしい。

 中国では政治家の多くが国外に多額の不正送金(この10年間で総額250兆円相当)をして、子弟を住まわせ、自分の政治的立場が危うくなればいつでも国外逃亡ができるように用意していると聞く。これらを「裸官(らかん)」というそうだが、日本の政治家が祖国を捨てて亡命したいなどというのは初めて聞いた。かかる亡国の徒に日本の政治をゆだねておくわけにはいかない。枝野が政権党時代にどこへ送金したかは知らぬが、中国でも北朝鮮でも何処へでも、さっさと亡命して去るよう願っておく。

(小言航兵衛、2013.10.6)


尖閣諸島

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