<小言航兵衛>

日本を犠牲に

 10日ほど前の新聞で見かけた週刊誌の広告にいわく、「出版界が『嫌中憎韓』ブームに沸いていると報じた朝日だが、ちょっと待ってほしい。そうした本が売れるのは朝日の歪んだ『反日報道』に皆がイラついているからじゃなかろうか。人民日報より中国を愛し、朝鮮日報より韓国を礼賛する朝日の罪」「いったいどこの国のメディアなのか。『嫌中憎韓』が売れるのは朝日新聞のおかげです」

 まったくその通りだと思う。それにしても、こんな広告を当の朝日が掲載しているのは度量の大きさを見せたつもりかもしれぬが、見方を変えれば朝日の厚顔ぶり――面の皮の厚さを示すものといった方が当たっているだろう。一種の確信犯である。

 ふり返ってみれば航兵衛も、この2年ほどの間に中国の不可解かつ不愉快な言動にイラつき、それを論難する本を無闇に買ってしまった。いま改めて一覧すると以下の20冊ほどになる。読みつくせないほどの分量はイラ立ちの量を示すもので、ヤケ酒にも似たヤケ買いである。

  • 『絶望の大国、中国の真実――日本人は、中国人のことを何も分っていない!』(宮崎正弘・石平、ワック、2009年5月8日刊)
  • 『増長し、無限に乱れる「欲望大国」中国のいま』(宮崎正弘・石平、ワック、2010年1月15日刊)
  • 『「中国の正体」を暴く――アメリカが威信をかける「赤い脅威研究」の現場から』(古森義久、小学館101新書、2012年2月6日刊)
  • 『現代中国「国盗り物語」』(宮崎正弘、小学館、2012年12月8日刊)
  • 『「無法」中国との戦い方――日本が学ぶべきアメリカの最新「対中戦略」』(古森義久、小学館、2012年12月8日)
  • 『おどろきの中国』(橋爪大三郎・大沢真幸・宮台真司、講談社現代新書、2013年2月刊)
  • 『中国の「反日」で日本はよくなる』(宮崎正弘、徳間書店、2013年3月30日)
  • 『間違いだらけの対中国戦略――日本人だけが知らない中国の弱点』(富坂聰、中経出版、2013年4月25日刊)
  • 『中国人に対する「労働鎖国」のすすめ』(西尾幹二、飛鳥新社、2013年4月8日刊)
  • 『2013年後期の「中国」を予測する――習近平の断末魔の叫びが聞こえる』(宮崎正弘・石平、ワック、2013年4月26日刊)
  • 『なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか』(内藤明宏、幻冬社、2013年5月刊)
  • 『中国の破壊力と日本人の覚悟』(富坂聰、朝日新聞出版、2013年5月30日刊)
  • 『中国に立ち向かう覚悟――日本の未来を拓く地政学』(櫻井よしこ、小学館、2013年6月7日刊)
  • 『面白いけど笑えない中国の話』(竹田恒泰、ビジネス社新書、2013年7月19日刊)
  • 『中国人の本性――歴史・思想・宗教で読み解く』(副島隆彦・石平、徳間書店、2013年7月31日刊)
  • 『中国自壊』(増田悦佐、東洋経済新報社、2013年8月1日刊)
  • 『中国はもう終わっている』(黄文雄・石平、徳間書店、2013年9月30日)
  • 『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(石平、PHP研究所、2014年2月6日刊)

 いくら何でも、われながら買いすぎとは思うが、もうひとつ中国におもねる朝日に関して、最も鋭く斬りこむのが、上の一覧とは別の『マッカーサーは慰安婦がお好き』(高山正之、新潮社、2013年8月10日刊)である。この本の表題と航兵衛の云いたいこととは関係がないので、あらかじめお断りしておくが、たとえば、かつて自民党政権が進めていたグリーンカードの法制化を「朝日は『国民総背番号』と言い換え『番号で管理される』と猛烈な反対キャンペーンを張」り「いったん成立した法案は五年後に廃止」に追いこまれた。

 さらに「朝日は中国の侵害を抑えるスパイ防止法案にも反対し、潰した」「次にこの新聞は在日の指紋押捺の反対キャンペーンに乗り出した」。その「結果、世田谷一家四人殺しが迷宮入りしたといわれる」。人びとは朝日の不可解な動きに気づき、著者の住むマンションでは「もう誰も朝日を読まなくなった」

 朝日は詐欺師・孫文についても嘘で固めた美談の連載を続けた。日本人が偉人と思いこんでいる孫文がなぜ詐欺師なのか。ここで説明している暇はないので、詳しくは本書を読んでいただきたい。

 原発の安全神話も朝日がつくり出したと本書はいう。無論3.11以前のことだが、変電所でボヤなどが起こると「朝日は大騒ぎをして『原子力発電所の安全性に懸念』とやる。地元は不安を表明し、東電は寄付金を出す」。これにより「たとえば大熊町は税収が2千万円から20億円に増えた」「県知事も懸念を示し、過去200億円も東電から寄付を取った。ゴロ新聞と組んだたかりにしか見えない」。そして、この元首相と同じ名前の知事は「娘も東電に入社させた」。本当だろうかと言いたくなるが、こうして立派な活字になるくらいだから間違いないのだろう。

 さらに「警視庁が警察官受験者のHIV検査をして感染者を不採用にした……ところが朝日は無断検査は人権侵害と騒い」だ。そのため、その男に「賠償金が支払われ、今は検査もやらせない」。おまけに「先日の朝日新聞医学欄では『HIVは怖くない、性交も大丈夫、癌にもかからない』と罹患の勧めを書いていた」

 航兵衛も朝日をとっているが、ろくに読んでいないので、HIVは怖くないなどという記事には気がつかなかった。これが本当だとすれば、まさしく怖い話で、この新聞が中国人同様、倫理感も衛生観念もないことを示すものにほかならない。

 こうした言動を重ねながら、アル・ゴアの『不都合な真実』の尻馬に乗った朝日は「CO2の増加で温暖化し、氷河が解け……海面が上昇を続け、ニューヨークが水没する」などと「声を荒らげて政府に京都議定書に署名させ、気がついたら日本は排出権とかなんとかで、なぜか中国に何兆円も支払う仕儀になっていた」

「その中国は排出制限なし。好きに汚して、それで日本から金を貰える」のだ。いっぽうの米国は「議定書署名を拒否した。拒否したのはほかならぬアル・ゴア本人」だった。

 つまり「『日本を犠牲にしても中国と仲良く』は朝日新聞の社是」。そんな「朝日のいうことは聞くな」というのが本書の結論である。

(小言航兵衛、2014.3.6)

 【参考文献】
      

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