<小言航兵衛>

身勝手な中国

 いよいよ中国が身勝手な本性を航空界でもあらわし始めた。景気の好いときは外交辞令をもって他者を呼び寄せ、うまいこと口車に乗せるが、いったん事情が変わるとてのひらを返したやり方で、約束も何も平気で反故にする。

 具体的には最近、航空当局が民間航空各社に対して、2009年に受領予定の旅客機をキャンセルするか先送りするよう指示を出したというのである。こんな契約違反を政府が先頭に立ってけしかけるのだ。

 これを受けて、民航各社は多少の抵抗はするだろうが、最終的には政府の意向に従わざるを得ない。といって、メーカーの合意を得るのも難しい。前門の虎と後門の狼に吠えたてられて、大騒ぎになるのは間違いない。

 エアバス社は現在、中国から400機以上の注文をかかえている。そのほとんどは狭胴型のA320ファミリーだが、決して安閑としてはいられない。今のところ、エアバス社は中国の動きについて、少なくとも表むきは静観の構えを見せている。公式にはまだ何の要求も中国からきていないからだ。しかし、いずれ強引な話し合いを持ちかけてくるだろう。

 さらに中国政府は民航各社に対し、老朽機は廃棄し、2010年までは航空機の購入申請を出さないよう要求している。というのは航空機を購入しようとする場合、航空会社はまず航空当局の許可を求めなければならない。そして許可が出た上で、メーカーに発注するという仕組みになっているからである。

 中国航空界はオリンピック・バブルもあって、ついこの間まで好景気にわいていた。それが2008年後半、世界経済の冷えこみと共に下降に転じ、同時に燃料価格でも痛手を受けた。

 だからといって、発注機のキャンセルには違約金が伴う。通常は購入価格の3割程度だが、少なくとも5〜10%は出さざるを得ないだろう。

 中国のエアライン業界は今年、大きな赤字が見こまれる。その影響はエアバスやボーイングに限らない。エンブラエル社も被害を受け、ジェネラル・エレクトリック、グッドリッチ、リース会社なども損害をこうむる可能性が出てきた。

 日本の自動車や電機のメーカーも、中国に何かを買って貰おうなどと考えぬ方がよい。ましてや買ってもらわんがために、日中友好などと言いつのる経団連や財界のトップは、自分もまた中国同様の身勝手を演じていることに思い及ぶべきである。

(小言航兵衛、2008.12.18)

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