『航空の現代』 から
暑中お見舞い申し上げます 盛夏――毎日うだるばかりの暑さですが、皆さまお元気ですか。見るだけで涼しくなるような画像を、ここにお届けいたします。巨大な氷山の一角だけではなく、水面下の部分まで全容をとらえた驚くべき写真です。氷山の下がこんなふうになっているなんて、今まで見たことはありましたか。
この写真は、アメリカから山野さんへ送られてきたものです。暑さをしのぐ巨大なかき氷のシャレかどうかは知りませんが、ちょっと拝借いたしました。
カナダ北東部はニューファンドランド島セントジョーンズの沖合で、グリーンランドの方から流れ出した氷山が石油プラットフォームにぶつかる恐れがあるというので、船で引っ張って漂流の向きを変えることになりました。そのとき水中に潜ったダイバーが、この写真を撮ったというわけですが、そのためには波が静かで、海水の透明度が高く、太陽が真上から明るく照らしていなければならなかったはず。きわめて希有なチャンスに恵まれたというわけです。
氷山の重量は3億トンと推定されるそうですが、全体の高さや幅は書いてありません。けれども、これを見れば何故タイタニックが沈んだか分かるそうです。
私は、しかし、最近の大疑士連中の素行もこのように透明度を高めて白日の下にさらさねばならぬと思いました。もっとも、そんなことを考えるとまた暑くなりますから、ここではやめておきます。
心頭滅却して酷暑をしりぞけましょう。
(西川渉、2002.8.1)
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