NBAA2000

ティルトローター近況

 

 

 アメリカとヨーロッパのティルトローター機について、今回のNBAAで明らかになったところを記録しておきたい。

 ベル/アグスタ社が開発中のBA609に関する話題の一つは、最近までの受注数が80機を超えたらしいということ。77機までは800〜1,000万ドルという価格と共に正確な数字が出ていたが、それ以降ははっきりしない。価格も引渡しの18か月前までに明らかにするという。これで2005年までの生産数は確保したもようで、これから発注する人が機体を受け取れるのは5年先。注文の際の前途金は15万ドルという。

 BA609第2の話題は初めて救急専用機としての注文が出たこと。この注文を出したのはスタット・メデバック社(Stat MedEvac)で、救急用として2機を発注したという。この救急会社は米ピッツバーグに本拠をもち、ペンシルバニア、オハイオ、バージニアの3州に点在する病院や空港にヘリコプター7機と固定翼機3機を配備して救急搬送に当たっている。1年間の搬送患者数は4,500人以上だが、そのひとつピッツバーグ郊外のウェストモーランド病院では年間600件の出動をしている。

 第3は原型1号機の製作がフォトワースの第6工場で進んでいる。初飛行は2001年夏、型式証明を取って引渡しがはじまるのは2003年末か2004年初めの予定。この開発はベル社が6割の費用負担をしているが、日本の富士重工も胴体を製造することになっている。キャビンは与圧式で、高度7,500mを509q/hの高速で1,400kmほど飛ぶことができる。速度も航続距離も通常のヘリコプターのほぼ2倍である。

 なおビジネス航空という観点からすれば、本機は将来、フラクショナル・オーナーシップ方式によって企業のビジネス機として普及する可能性が高いというのがベル社の見方。フラクショナル方式は4〜8社が分割所有し、1社あたりの負担を軽くするビジネス機の共用方式で、その運営会社から本機について照会がきているという。

 

 

 他方、欧州のヘリコプター・メーカーは共同でティルトローター機の開発を進める計画で、欧州委員会の支援を求めている。設計構想はBA609の2倍程度の大きさ。乗客20人をのせ1,400kmの航続性能を持つ。

 この開発を欧州委員会が支援するかどうか、結論が出るのは早ければ年内。メーカー側としては、このNBAA大会の前に結論が出て会場で発表したいという心積もりだったが、それには間に合わなかった。

 共同開発に名乗りを上げているのはユーロコプター社とアグスタウェストランド社を初めとする約20社。2002年から試作にかかり、2004年から2007年まで飛行試験によって技術評価を終わり、同時に量産機の製造に入って2010年までに就航させるという計画。そのための開発費は8.5〜12.75億ドルと見積もられている。

 ユーロコプター社の市場予測によると、10〜30席のティルトローター機は2010〜2030年の間に1,300機。また2020年以降は50〜70席の大型ティルトローター機の可能性もあるという。

(西川渉、2000.10.17)

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