NBAA2000

大型ビジネス機競争

――ボーイング対エアバス――

 

 

ボーイングとエアバスの両社は英国ファーンボロで火花を散らしたと思ったら、今度は米国ニューオルリンズでも激しい闘争心を見せた。英国では旅客機が火種であったが、米国ではビジネス機の競争である。

 欧州エアバス社の大型ビジネス機ACJ(エアバス・コーポレート・ジェットライナー)はA319を基本として燃料タンクを増設、航続距離を伸ばしたもの。ガルフストリームGVやグローバルエクスプレスほどの航続性能はないが、キャビンはずっと広く、ベッドルームやシャワーも完備しているから、これを使う企業トップは旅先でホテルに泊まる必要がない。つまり夜間を移動時間に当てて、快適な寝室で目が覚めたときは目的地に着いていたという効率のよい出張ができる。

 また基本的には通常のA319旅客機と変わりがないから、ビジネス機として使わなくなったときは、中古の旅客機として売却することもできる。そこがボーイングBBJにまさる利点というのがエアバス社の言い分であった。

 こうしたA319CJの10月なかばまでの受注数は26機。航空旅客は年率6%の割合で増加し、定期便の混雑や遅れがますますひどくなってきたことから、企業トップたちはいっそう社用ビジネス機を重用するようになってきた。好きなときに、好きなところへ直接飛んでいけるのがビジネス機の利点である。

 またコンコルドの運航中断もビジネス機の需要に拍車をかけるのではないか。コンコルドが飛ばなくなっただけで、欧州だけでも25機のビジネス機の需要が発生するとエアバス社は見ている。

 一方ボーイングBBJは1996年の計画発表から最近までの受注数が71機。生産数は1998年7月に1号機がロールアウトして以来2年余りで46機を超えた。今年9月には主翼両端に高さ2.4mのウィングレット装着がFAAの承認を得たばかりである。これで航続距離が400〜500kmほど伸びる。また高温・高地での離陸性能が良くなってペイロードが2トン近く増加する。従来のBBJにも80万ドルで追加装備が可能。

 この基本型BBJは、たしかにエアバス社がいうように737-700の胴体に737-800の主翼をつけた変形だが、ボーイング社は胴体を737-800に取り替えるストレッチ型のBBJ2計画を打ち出した。これでキャビンスペースは25%増となる。初飛行は来年2月の予定。

 機体価格はBBJ基本型が3,750万ドル、BBJ2が4,450万ドル。これに顧客の好みにによって400〜1,000万ドルの内装費が加わる。こうした発展型の登場によって、ボーイング社は今後、BBJについて年間18〜24機の注文が出ると予測している。これまでは年間10機という想定だった。

 今の受注数71機のうち4機はBBJ2。ボーイング社は、これまで以上にビジネス機に意欲を燃やし、次のBBJ3の開発計画も構想中。同機は757-200を基本とするもので、BBJ2よりも床面積は25%増し、航続距離は13,000kmを超える。 

(西川渉、2000.10.27) 

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