NBAAショー

ビジネス機の動向

 

 

 今日、12月13日から3日間、ニューオルリンズでビジネス航空ショーが開かれる。米国ビジネス航空協会(NBAA)の主催になる年次大会である。本来は9月なかばの開催予定だったが、9.11多発テロの影響で2か月ほど延期された。

 この機会をとらえて、ビジネス航空機メーカーが新しい計画を発表したり、機材を公開するなどの動きを見せている。その中から、以下いくつかの話題をメモしておきたい。

 ブラジル・エンブラエル社が開発を進めてきたビジネスジェット「レガシー」は12月10日、ブラジル政府の型式証明を取得した。来年春にはFAAの型式証明を取得する予定。

 レガシーはリージョナル・ジェットERJ-135を改造してビジネス機としたもの。キャビン内装はエグゼクティブ仕様で乗客14人乗り、社内連絡用は19人乗りとなる。これまでの受注数は確定48機、仮44機で、米スィフト航空からはそのうち確定25機、仮25機の注文を得ている。1機あたりの価格は1,980万ドル。

 ボンバーディア社は新しいビジネスジェット「コンチネンタル」を初めて公開した。同機は12月11日ニューオルリンズ空港に飛来し、マスコミその他の関係者に公開された。

 その開発は1999年6月にはじまり、今年8月14日に初飛行した。つづいて2号機も10月10日、3号機は12月6日に飛んで、現在3機で試験飛行がつづいている。最終的な飛行性能は実用上昇限度13,716m、最大速度マッハ0.83の予定。 

 今後は2002年秋までに型式証明を取り、2003年から引渡し開始の予定。主翼は三菱重工が製造する。2001年11月現在の確定受注数は115機となっている。

 ボンバーディアに関するもうひとつの話題は新しいビジネスジェット「グローバル5000」。2001年10月25日に開発計画が発表されたもので、長航続性能を持つグローバル・エクスプレスを基本とし、それより短かい滑走路で離着陸できるようにすると共に、航続10時間の飛行が可能。速度はマッハ0.88、934km/h。


(試験飛行中のコンチネンタル)

 仏ダッソー社は近年、徐々にビジネス機の引渡し数を伸ばしてきたが、2001年はこれまで最大の80機を出荷する予定。同じく来年も、世界的な経済不況にもかかわらず、80機を出荷する計画で、他のメーカーがいうような生産量縮小の予定はないとしている。

 ダッソー社の今年の大量受注は、ユナイテッド航空のフラクショナル事業部から46機のビジネスジェットを受注、ネットジェット社からもファルコン2000EXについて25機の注文を受けた。

 「ファルコン7X」は今年7月のパリ航空ショーで計画が発表されたもの。主翼に最新の技術を採り入れた全く新しいビジネスジェットで、操縦系統はフライ・バイ・ワイヤ。この年末までに50機の確定受注をめざしている。価格は3,565万ドル。

 初飛行は2005年初め、型式証明取得は2006年なかばの予定。

 ガルフストリーム社では新しいGV-SPが8月31日に初飛行した。このとき同機は2時間6分の飛行中に、飛行速度マッハ0.8、高度12,500mに達した。

 GV-SPの設計仕様は航続距離が12,500kmで現用GVよりも460kmほど長く、マッハ0.87で航続9,260km、マッハ0.85で15,000kmの巡航飛行性能をもち、GVより600〜700kmほど長い。また離着陸性能が良くなっているので、GVより小さい飛行場で発着できる。

 最近までの受注数は42機。FAAの型式証明は2002年末までに取得、2003年から引渡し開始の予定。

 エンジンとアビオニクスのメーカー、ハニウェル社は今後のビジネス機の需要について新しい予測を発表した。それによると、ビジネスジェットは2002〜2011年の10年間に8,400機の需要があるという。これは3か月前の発表に多発テロの影響を加味した予測で、500機ほど少なくなった。

 特に向こう2〜3年はテロの影響による経済不調がつづくため、2000年には758機が生産されたのに対し、2001年は750機、2002年は705機、2003年は734機と低迷が続くと見ている。

 こうした情勢の中、ボーイング社は大型ビジネス機BBJ3の開発計画を棚上げにした。同機は757-200旅客機の胴体に757-300の主翼を組み合わせるもので、今年3月に計画が発表された。

 1機あたりの価格は9,500万ドル(約120億円)の予定だったが、当面大した需要は見こめず、計画中断の措置となった。

 一方ティール・グループの需要予測は、かねてから余り良い見通しではなかったが、テロの影響で一般経済の不況が長引き、企業の収益が減るところから、ビジネス機の需要も低迷が続くと見る。しかし、その一方で大企業のトップの中にはハイジャックの危険性や空港の保安手続きの強化による遅延の増大や欠航を避けるため、定期便の利用を嫌い、ビジネス機を選好する人も出てくる。

 これら相反する要因を勘案して、今年728機、109.1億ドルのビジネス機生産数は当分低迷が続き、2007年になってようやく738機と上向きはじめる。今後10年間の総生産数は6,896機、944億ドル相当となるであろう。

 これをメーカー別のシェアで見ると、下表の通りとなる。

メーカー

シェア(%)

備   考

ボンバーディア

25.5

   

ガルフストリーム

25.1

ギャラクシーを吸収した結果

ダッソー

18.9

   

セスナ

17.2

   

レイセオン

11.5

      

その他

1.8

   

合   計

100.0

   

 なお将来、超音速ビジネス機の出現は技術的にも市場の要請から見ても時間の問題とティール・グループは見る。とりわけボーイング・ソニック・クルーザーが実現すれば、同じようなビジネス機が登場するのは必然であろう、と。

(西川渉、2001.12.13)

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