NBAAショー(2)

ビジネス機で定期運航

 

 

 第54回NBAA年次大会は、9月18〜20日開催の予定が1週間前に発生した多発テロのために2か月ほど延期され、12月13日からはじまった。出展者は約700社(または団体)で、9月に予定された3分の2に減少した。参会者も、昨年の3万人に対して12,000人程度と見られる。これは1987年以来最も少ない人数という。

 しかし悲観すべき要素ばかりではない、というのがNBAAの見方。経済不況の今こそ企業のトップは業績回復のために世界中を飛び回る必要があるわけで、それにはビジネス機が不可欠の交通手段となる。そのうえ定期便にはハイジャクの不安が残り、それを防止するための空港での保安検査に手間取り、しばしば定時性を損なう。その意味で、ビジネス機はテロ対策の最も有効な手段とNBAAは主張している。

 今年のNBAAショーで、もうひとつ目につく、というよりも目につかないのが主要メーカーである。セスナ、レイセオン、ガルフストリームは展示を取りやめ、ボンバーディア、ボーイング、ダッソー、ロールスロイスは展示規模を縮小した。

 ただしFBO企業や内装メーカーは従来通りの展示をしているところが多い。

 フェアチャイルド・ドルニエ社は「エンボイ3」ビジネスジェットについて3機の注文を受けた。これで同機の受注数は10機になる。

 エンブラエル「レガシー」は75機の注文を受けた。インディゴ・エアからの一括注文で、内訳は確定25機、仮50機となっている。インディゴはシカゴ・ミッドウェイ空港(MDW)に拠点を置き、そこからニューヨーク近郊のティータボロ飛行場(TEB)までファルコン・ビジネス機を使って座席売りのチャーター運航をしている。1日4回の往復で、いわばビジネス機による定期運航である。利用者はふつうの定期便のビジネスクラス客や割引きなしのコーチ客。

 インディゴは最初のレガシーを来年8月に受領し、MDW〜TEB間で運航しながら、機数の増加につれて他の都市への拡大をすすめてゆく計画である。レガシーはリージョナル・ジェットERJ-135を基本としているため、機内にはデラックス席19席を置くことができる。

 レガシーの受注数は、このインディゴの注文を合わせて確定73機、仮94機となった。合わせて167機である。

 ユナイテッド航空傘下のアヴォーラ航空は合わせて82機のビジネス機を発注した。内訳はビーチジェット400が確定15機、仮10機、リアジェット45と60が57機である。フラクショナル・オーナーシップ事業に使うのが目的で、これらが引渡されると同社の保有機は309機になる。ただしファルコン50やホーカー800など現用機の一部は徐々に売却される。

 ガルフストリーム社は超音速ビジネス機の開発研究を進めている。同機は最大離陸重量56,700kg程度で、機体価格は7,000〜8,000万ドル(約100億円)。ガルフストリームGVの2倍くらいになるが、200〜300機の需要はあると見ている。

 機体形状は後退角の強い矢羽根のような主翼とT形尾翼をもち、エンジンは胴体に取りつけられる。巡航速度はマッハ1.6〜2.0。乗客8人をのせて7,000km以上の航続性能を有する。滑走距離は現用ビジネス機と同じ1,800m程度。

 これを14人乗りとして、今のビジネスクラスの運賃で定期便に使うことも考えられる。

 設計作業はソニックブームを抑えることに重点が置かれ、その可能性が見えてきた。これをガルフストリーム社ではQSJ(Quiet Supersonic Jet:静かな超音速ジェット)と呼んでいる。

(西川 渉、2001.12.15)

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