NBAAショー(4)

ボーイングBBJとエアバスACJ

 

 

 ボーイング対エアバスの競争は旅客機ばかりではない。ビジネス機の分野でも激しい闘いが演じられている。どちらも普通の旅客機を改造して大型・豪華ビジネス機として売り出しているからだ。

  

 ボーイング・ビジネスジェット(BBJ)は1996年7月2日、ボーイング社とジェネラル・エレクトリック社との協力によって誕生した。以来今日までの受注数は83機となった。当初は毎年6機、多くても8機程度の受注と生産になると考えていた。しかし最近までの受注数は予想の2倍になるわけで、この1年間を見ても、1年前の71機から12機が増ている。

 引渡し数は9月末までに64機。これらの機体は塗装も内装もしていないグリーン機としてメーカーから出荷された後、独ルフトハンザ・テヒニーク社(LHT)などで6〜8か月がかりで内装工事が施されるから、現在実用に供されているのは、そのうち40機。

 グリーン機の年ごとの出荷数は、1998年が8機、99年29機、2000年14機、2001年が1〜9月で13機であった。合わせて64機である。

 

 実用になった機体のうち4機はネットジェットのフラクショナル・オーナーシップ事業で飛んでおり、年内さらに3機が追加される。ネットジェットは確定15機、仮14機のBBJを発注している。

 2001年に入ってからはBBJ2も登場し、4機が引渡された。最近では英マルチフライト社が発注したが、これは長距離の豪華チャーター運航に使われる。

 機内はラウンジが2区画のほかに、食堂、運動場、シャワーつきバスルーム2か所、ベッドルーム、執務室、ギャレーから成る。ラウンジのひとつは大きなスクリーンを取りつければ映画を上映する劇場にもなる。客席19席にはすべて電話、ファックス、インターネットの接続口がついている。

 

 またジュネーブを拠点とするプライベートエア社は、BBJの機内を48席としてジュネーブ〜ニューヨーク間の定期運航を計画中。この定期便は、単に機内が豪華であるばかりでなく、「FBOからFBOへ」の運航が特徴。FBOとはジュネーブとニューヨークの両空港にある Fixed Base Operation ――すなわち社用機や自家用機を対象とする空港サービス会社で、独自のターミナルビルを所有する。このFBOが定期便の乗客を社用ビジネス機のVIP同様に扱うというわけである。

 こうした運航形態は、プライベートエアによれば、単にサービスが良いばかりでなく、9.11多発テロ以来の危機管理問題から旅客の身辺の安全を保障し、手荷物検査に手間取って発着が遅れたり、欠航になったりするのを防ぐことにもなる。

 またジュネーブに存在する大企業のトップにとっては、これまでのようにチューリッヒや欧州のハブ空港で乗り換えてニューヨークへ飛ぶといった面倒がなくなり、旅行時間も短縮される。事実、テロ事件以来、ビジネス機のチャーター運航が増加する傾向にあるという。

 なおBBJは737-700を基本とするBBJ1と737-800を基本とするBBJ2がある。BBJ1はキャビンの長さが24m以上、乗客8人をのせて11,360kmの航続性能を持つ。価格は4,750万ドル。もうひとつのBBJ2はキャビン長が30mで、航続10,550km。価格は5,950万ドル。

 先日のNBAAショーでは、ボーイング社の社用BBJが展示された。

 

 一方エアバス社が製造しているエアバス・コーポレート・ジェットライナー(ACJ)は、A319旅客機を基本とするビジネス機で、これまでに30機の注文を受け、12機が出荷された。うち8機はすでに実用中。

 ダイムラークライスラー社やイタリア空軍などが使っているが、米国籍の機体はない。ところが、このほどユナイテッド航空の子会社、アヴォーラー社から15機の注文を受けた。

 同社はフラクショナル・オーナーシップ事業を目的として今年5月に設立された。これまでにガルフストリームやファルコンなど224機、40億ドル相当の機材を発注しているが、ここにきてACJの運航に乗り出したもの。

 これらの機材は、フラクショナル・オーナーのためにユナイテッド航空の機長が操縦し、子会社のユナイテッド・サービスが整備作業などをおこなう。ACJの北米進出はこれが初めてで、アヴォーラーがシカゴを拠点にしていることから、ボーイングのお膝元に切り込んだことになる。いずれはフラクショナル・オーナーシップ事業ばかりでなく、ACJによるシャトル運航も計画している。

 さらにアヴォーラー社はACJの北米における販売代理店としての活動も開始する計画。また販売した機体の運航や整備作業を委託することも考えられる。

 

 ACJは、今回のNBAAショーではパリのエアロ・サービス・エグゼクティブ社の機体が展示された。同機はファーストクラス席29席がつき、席を回して向かい合うこともできる。フル・リクライニングが可能で、ベッドと同じような快適な睡眠がとれる。前方にはラウンジもある。

 エアロサービス・エグゼクティブ社は、このACJをルブールジェ空港からチャーター機として中東、北米、中南米へ飛ばしており、パリからサンパウロまで最長9,400kmを飛んだこともある。これまでの飛行時間は400時間。

 なおACJはキャビン長が23.7m。乗客8人を乗せたときの航続性能は11,300km。価格は4,500万ドル。

(西川渉、2001.12.25)

表紙へ戻る