<2016年>

明けましておめでとうございます

 今年もまた沢山の年賀状をいただきました。はなはだ恐縮いたしております。というのも、古稀を迎えたときから長年の習慣をやめて、本頁をもってそれに代えることとしたからです。目上の方々からの賀状も多く、家人は「それでいいの?」と心配しております。

 それにしても、ふと気がつくと、いつの間にか傘寿になっておりました。もっとも、気がつくのが遅すぎて、本当は数え年にもとづいて1年前に気づくべきだったのかもしれません。ただし、気がついてもお祝いなどする気はありませんが。

 さて、私の読書統計ですが、記録を調べてみると、昨年は1年間に349冊の本を買っておりました。ほぼ毎日1冊ずつ買っているようなものです。そのうち電子図書が264冊でしたから、ちょうど75%――つまり4分の3です。電子図書はマンガとどうでもいい本しかないなどとバカにする人がいますが、最近はかなり硬派の本も増えてきました。決してバカにはできません。

 しかも安い。電子図書の購入が多い理由はそこにあるわけで、紙の本が再版制度によって、割引きや安売りを禁じられているのに対し、電子図書はその対象ではないのかどうか、出版界のルールは知りませんが、割引きが多い。そのため、つい買ってしまうわけです。

 むろん作家や著者からすれば、汗水たらして取材を重ね、ない知恵を絞って書いた本を、そんなに簡単に安売りできるかということでしょう。けれども、売れ残って裁断され、紙クズになるよりは、1割とか3割の割引きをして、すこしでも多く売れる方がマシではないでしょうか。読者の懐も助かるというものです。

 それにアメリカなどの出版ルールは、これまた知りませんが、普通の新刊本の書店で、どうどうと安い値段をつけて新本を売っている。あれで著者や出版社が怒らないとすれば、日本も同じようなことを考えてほしいものです。

 私は電子本をiPadで読んでおります。特に夜、ベッドの中で、部屋の灯りをすべて消しても、コンピューター画面だけは明るいので文字が読める。それを読みながら、いつの間にか寝入ってしまうというのが、まことに気持ちのいい入眠法ではないかと考えています。

 ところが最近、そのようにして電子本を読むのは目に良くないばかりか、眠れなくなると書いてある本、それも電子本を見つけました。『ブルーライト 体内時計への脅威』(坪田一男、集英社新書)というのがそれで、太陽の光に含まれる青い光「ブルーライト」はLED照明や、LEDをバックライトにした液晶ディスプレイにも含まれ、その光を眼が受けると眠りを誘うメラトニン(ホルモン)の分泌を抑えて、人が眠りにつくのを妨げる。

 そういわれてみると、たしかに紙の本を読んでいるときは電灯が明るくついているのに、気がつくと眠っている。ところがiPadの電子本はいつまでたっても眠くならない。そんな気がします。その結果、睡眠障害やうつ病、肥満、高血圧、がんなどのリスクを高め、老化を進めてしまう原因にもなるというのです。

 その前に眼そのものを痛めてしまうらしい。本を読むのも怖ろしい覚悟が必要になってきました。などと言い訳をしながら、あっちを読んだり、こっちを読んだり、ちょっとかじったり深くのめり込んだり、最後まで読み通した本は1年間で95冊でした。購入した349冊の27%ということになります。まあまあの打率といっていいのではないでしょうか。

 ところで去る11月11日、わが航空界の希望の星、三菱リージョナル・ジェット(MRJ)が初飛行しました。操縦桿を握ったテスト・パイロットによれば「飛行機が飛びたいと言っているようだった」というほど順調な飛行だったそうです。

 しかし試験飛行を重ねるにつれて不具合が見つかり、年末には主翼の「強度不足」が表面化しました。文字通りであれば、誠に重大な問題で、実用機の全日空むけ引渡し開始も1年延期を余儀なくされました。

 そんな折から、今朝の元旦の新聞に天皇・皇后両陛下のお歌が掲載されました。そのひとつがなんと、皇后さまのMRJに対する期待感をお詠みになったもので「YS11より53年を経し今年」という詞(ことば)書きがついています。

 国産のジェット機がけふ飛ぶといふこの秋空の青深き中

 関係者はもとより、航空人たちは誰もが奮い立たずにはおれないはず。強度不足もすぐに解消することでしょう。

 佳き年のご多幸をお祈りいたします。

(西川 渉、2016年元旦)


新幹線の車窓から見た冨士
(2015年11月撮影)

    

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