<2017年>

明けましておめでとうございます

 がんの切除手術をしてから4年余りが経過しました。リンパ腺などに転移していたがん細胞も、1年ほど前から消えて、体調も回復してきました。

 そこで昨年夏には10日間ほど欧州を訪ね、ドイツ、イギリス、スイス、イタリアの4ヵ国がヘリコプター救急飛行の安全についてどんな策を講じているのか、調査をしてきました。その結果は、この2月A4版60頁ほどの報告書として印刷になる予定です。

 また国内でも北海道から九州まで数ヵ所のドクターヘリ基地病院を訪ねるなどの出張をしました。いずれも『HEM-Netグラフ』誌に訪問記として掲載されております。

 昨年は記録を調べてみると、雑誌や漫画などを除いて、1年間に259冊の本を買っておりました。このうち最後まで読み終わったのが85冊で、購入した本の32.8%――つまり3分の1です。むろん残りの本も多かれ少なかれ、ある程度は読んでいるわけですが。

 購入したのは大半が電子図書でした。値段の割引きがある上に、自宅で居ながらにして買えるし、すぐに読み始めることができます。

 ただ紙の本と違って物理的な実体がないので、2〜3日たつと買ったことを忘れてしまい、いま記録を見直しながら「あれ? こんな本を買ったかな」などと驚かされたりしております。ときには同じ本をくり返して買いそうになり、パソコンの操作中に機械の方から「これは前に買った本です」などと注意されます。

 余談ですが、アマゾン書店では月に980円を払うと本が読み放題というサービスが始まりました。最初の1ヵ月間は無料体験も可というので早速やってみましたが、1ヵ月後に諦めました。読み放題の対象となる本が漫画とか下着女性の写真集とか、三流の小説や実用本など、こちらの読みたいものがほとんどないからです。

 このシステムは、アマゾンと出版社の間でももめごとが生じたようで、新聞沙汰になっていました。もう少しまともな本が読めるような内容に変えて貰いたいものです。

 ところで昨年初め、母が他界しました。ちょうど百歳という年齢でした。

 1915年生まれの母は、日本女子大の在学中にお見合いをして、すぐに中退し、二十歳(はたち)で結婚しました。そして40年間父と一緒に暮らしましたが、そこで父が他界しました。その後40年間は福岡でひとり暮らしとなり、晩年の10年ほどは体が弱ったために妹が東京との間を往ったり来たりしながら一緒に暮らしておりました。

 つまり、繰り返しになりますが、母の100年間の生涯は、最初の20年が娘時代、次の40年が結婚時代、最後の40年が寡婦時代というわかりやすい区切りになります。

 そして100年間、大東亜戦争をはさんで、われわれ7人の子供を育てながら、病気らしい病気もせず、最後は老衰によって夜の睡眠中に息を引き取りました。その2日ほど前に、私は福岡へ様子を見にゆき、東京に戻ったばかりで臨終に立ち会うことはできませんでしたが、苦しむようなことはなかったとのこと。

 今頃は紫雲たなびく天空の彼方で父との再会を果たし、昔の生活に戻ったのではないかと思います。むしろ、おめでたいと云うべきでしょう。

 佳き年のご多幸をお祈りいたします。

(西川 渉、2017年元旦)

      

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