<パリ航空ショー>

ATRとキングフィッシャー

 

 ATRターボプロップ機の売れゆきが素晴らしい。パリ航空ショーまでの半年間に63機の注文を受けたが、これは昨年1年分の受注数と同じである。

 また、このときのATR受注総数は丁度900機となった。昨年6月末の受注総数が808機だったから、この1年間に100機近い注文を受けたことになる。これで6月末の受注残は170機となった。

 こうした受注増に伴い、ATR機の引渡し数は2007年に44機が予定されているが、2008年は64機、09年は70機になるもよう。こうした引渡し数の増加ぶりは次表のとおりである。

引渡し数

2005

15

2006

24

2007

44

2008

64

2009

70

  ところで、カナダのボンバルディア機と競り合うATR機は、離着陸性能を最大20%ほど引上げる試験を開始したもよう。短距離離着陸(STOL)性能を売り物にしている現用ダッシュ・セブン(DHC-7)に替わるのがねらい。

 その内容は原型ATR72-500に強出力のPW127エンジン(4,510shp)を取りつけ、満席でも850mの滑走で発着可能とするもの。離陸後は毎秒7.6mの上昇ができる。試験飛行は今年秋に終わり、2008年なかばまでに実用化するという。

 具体的にはマレーシアのバルジャヤ航空が6月ダッシュ・セブンの後継機としてATR72-500を4機発注したが、従来と同じ短い滑走路でも発着できる。将来はダッシュ・エイト(DHC-8)のSTOL性能にも対抗することとなる。

 上の写真はパリ航空ショーで見たキングフィッシャーのATR72。同航空はインドの新興エアラインで、ビール会社を背景に急成長を続けてきた結果、エア・インディア国営航空を除けば、インド最大の民営航空企業にのし上がった。現在では国内69ヵ所を結んで1日537便の定期運航をおこない、市場シェアは33%に達した。使用機はエアバス機が41機、ATRが30機。ほかに5機のA380を始め多数のエアバス機を発注しており、近く国際線へも乗り出す計画を進めている。

 また最近は、ライバルのインド国内航空エア・デカンの株式26%を取得したと伝えられる。エア・デカンはインド最大の格安航空会社だが、最近キャッシュ・フローがゆき詰まって、新たな出資者を探していたらしい。これで同社は、新しいA320やATRターボプロップ機をさらに増機してゆく考えとか。いずれは両社の完全合併もあり得るという。


エア・デカンのATR72

【関連頁】

 飛躍のときを迎えたATR双発ターボプロップ機 (2005.2)

(西川 渉、2007.7.24)

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