<パリ航空ショー>

ボーイングは受注ゼロ

 

 暗く垂れこめた雨雲の下で始まった今年のパリ航空ショーだったが、あとになって薄曇り程度にはなったかもしれない。

 初日カタール航空がエアバスA320を24機発注したことは昨日書いた通り。その後ウィズエアからA320について50機の注文を受けたほか、エアアジア、ベトナム航空、セブ太平洋航空、ツェストエア、インドのパラマウント航空などの発注もあったもよう。

 これらを合わせると、確定受注数58機、仮注文や予約69機というのがエアバス社のショー会場での取引き数という。

 そのほとんどはA320ファミリーだが、A350XWBについてはマレーシアのエアアジアから15機を受注した。うち10機は確定、5機が仮。派生機種は乗客400人乗りのA350-900で、2016年に引渡され、ヨーロッパ、アメリカ、南米、アフリカなどへの長距離路線に使うという。

 一方ボーイング機については、最後まで1機の注文もなかった。近年のパリやファーンボロの航空ショーでは初めてのことではないだろうか。

 それどころかカタール航空からは、ボーイング787の遅れについて強い非難を浴びた。同航空は787を60機発注しているが、いつまでもぐずぐずしているなら、契約を取り消すというのである。

 カタール向けの787は、引渡し日程が当初の予定から1年半遅れて今のところ2011年末頃1号機の引渡しになる見こみ。それに対してカタールが何を怒っているのか、外部のものには分からないが、おそらくは引渡し遅延に対する賠償金額の問題ではないだろうか。ボーイングには誠意がないとか、交渉態度はプロ的ではないとか、ビジネスのできる奴がいないとか、椅子を蹴って立ち去る権利は誰にでもあるとか、過激な言葉がショーの会場で聞かれた。

 それに対してボーイング社は「787は間もなく初飛行する。顧客との間にも緊密な連絡をしながら仕事を進めている。この飛行機は必ずや将来、エアラインや旅客にとって価値あるものとなるだろう」と語っている。

 さらにボーイング社は、787が今日にでも飛行可能と語った。同機の地上試験は飛行状態を模したテストも終了した。結果は予想以上に良好だったという。

 しかしボーイング社としては、ここで焦るつもりはない。事を急いで間違いがあってはならないからで、いずれにせよ6月中に飛ぶことは間違いないとしている。

 ひょっとしてパリ航空ショーの期間中に初飛行という花火が上がるのではないかと考えた人もいるかもしれない。が、ショーとテストは別問題。「とにかく万全をつくして、過ちなきを期したい」というのがボーイング社トップの姿勢。


フライトラインへ向かう787原型機

 ボーイング787とエアバスA350XWBはお互いに相手を意識した競合機だが、それぞれの受注数は787が865機、A350が483機という。 

(西川 渉、2009.6.20)

 

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