<ボーイング>

787まもなく初飛行

 

 ボーイング787は、パリ航空ショーの期間中に期待されたような初飛行はできなかったが、まもなく飛ぶ予定。6月28日に飛ぶと伝えるところもある。

 この日はボーイング社にとって、特に過去3年来、休日を返上して仕事をしてきた技術陣にとっては「夢の実現」を迎える瞬間ということになろう。

 787の開発遅延問題の発端は、複合材の大量使用という技術的な課題と、各部品の製造を世界中の下請け企業に委託するという生産方式だった。それらが何とか解消して、今ようやく初飛行まで漕ぎつけたということである。

 しかしおそらく、もっと大変なのは初飛行後の試験飛行であろう。初飛行から型式証明の取得と量産機の引渡し開始までの期間がきわめて短く設定されているためで、この間のちょっとした不具合が大きく日程を狂わすことにもなりかねない。引渡し開始は2010年3月に予定され、全日空が1号機を受け取ることになっている。

 もうひとつ、技術的な問題のほかに、経済的な難題もひかえている。各エアラインへの引渡し遅延に伴う賠償金額の交渉である。たとえば量産1号機は2008年5月に引渡される計画だった。それが来年3月となれば、1年10ヵ月――もしくは2年近く遅れたことになる。

 そのうえ受注先もエアライン56社、機数にして865機という膨大な数だから交渉だけでも大変だし、賠償金も恐ろしいほどの高額になるのではないか。

 さらに交渉が難航すれば、エアライン側には注文取消しという切り札もある。現にこれまでも多数のキャンセルが出ている。

 試験飛行の期間も、初飛行から型式証明まで8〜9ヵ月しかない。ボーイング機のこれまでの実態からすれば、開発飛行がこんなに短期間で終わった例はないのではないか。少なくとも1年は要したはず。

 それに試験飛行には原型6機を使うというが、完成したのはまだ2機だけで、あとは製作途中の段階にある。

 試験飛行は、ほとんどが昼間におこなわれる。その結果を、何百人もの技術者や整備士が徹夜で分析し、翌日の飛行にそなえる。時間が限られているから、綱わたりのような作業を続けなければならない。

 航空機の開発には、技術力、経済力に加えて、大変な忍耐力が必要なのである。


飛行準備中の787原型2号機

(西川 渉、2009.6.22)

 

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