<パリ航空ショー>

いよいよ開幕

 パリ航空ショーがいよいよ始まる。1909年の第1回以来、原則2年ごとに開催して今年が50回目だそうである。場所はパリ近郊のルブールジェ空港。期間は6月17日から23日までとなっている。

 この1週間のうち最初の4日間は世界各国の航空関係者だけが来場し、技術交流と経済取引をおこなう。そして次の3日間が誰でも入場可能な一般公開日となる。展示企業は世界44ヵ国から2,200社。

 今年のショーのハイライトは、むろん幕をあけてみなければ分からないが、予想されるひとつが開発中のエアバスA350。開幕直前までに初飛行して、南仏ツールーズからパリに飛来するというが、果たして間に合うかどうか。予定ではフランス時間の6月14日午前10時というから、日本の午後6時だろうか。これが間に合って、同機がショー会場上空に姿を見せ、フライパスで通過すれば、観衆を大いに沸かすこととなろう。

 ほかに注目すべき展示機はユーロコプターX3ハイブリッド・ヘリコプター、ガルフストリームG650ワイドボディ・ビジネス機、先月公開されたばかりのピラタスPC-24ジェットなど。

 ちなみに2年前、前回(2011年)のショーの結果を見ておこう。主催者のフランス航空宇宙工業会が集計した実績データは次のとおりである。

  • 出展者:世界45ヵ国から2,113社(各種団体も含む)
  • 航空宇宙関係の入場者数:151,000人
  • 一般市民:204,000人
  • 展示面積:130,000平方メートル
  • 航空機展示面積:192,000平方メートル
  • 飛行展示機:150機
  • 世界中からのジャーナリスト:3,200人
  • 約100ヵ国の公賓:290人
  • 会期中のイベント:7,000件
  • ショーに関する報道(新聞、TV):10,000件
  • ショーで売れた航空機:1,400機

 余談ながら、かつては筆者もよく航空ショーを見に行った。もちろん会社勤めをやめた後のことで、現役のときは特にヘリコプター事業は夏が忙しいから、遠い外国までショーを見に行く暇などなかった。

 大きな航空ショーはパリ、ロンドンが毎年交替で開催し、ロンドンと同じ年にベルリン航空ショーも開かれるから航空専門記者などはなかなか忙しい。もっとも半分は楽しみだから、出張を命じられても、誰もイヤとはいわない。

 こちらも遊び半分で、ショー会場で誰かに会って話を聞いたり、レクチャーを受けたりするものの、たいした義務があるわけではない。したがって、どこかのメーカーの接待用シャレーにもぐりこんで、ビールを飲みながら宙返りをする飛行機の写真を撮っていた。動画もずいぶん撮ったが、やはり迫力のあるのは戦闘機である。

 旅客機は戦闘機ほどではないが、大きいので戦闘機の速度に対抗して迫力を見せることができる。そこへゆくとヘリコプターなんぞはなかなか注目されず、飛行ぶりを大声で説明するアナウンスの方がよほど迫力いっぱいだった。

 展示飛行中の事故は一度だけ遭遇した。1999年のパリ航空ショーで、ロシアの戦闘機が展示飛行をしていて墜落した。そのとき私自身はベル社かどこかのシャレー、つまり屋内にいて新しい機種のレクチャーを受けていたため、事故の瞬間は見ていない。不意にドーンという大きな音がして、とたんに「crash!」という声があちこちで起こり、そこらにいた人びとがいっせいに駆け出した。

 こちらも慌てて外に出たが滑走路の遠くの方で黒い煙が上がっているのが見えるだけで、よく分からない。あとから知ったところではスホーイ戦闘機が低空飛行中に操作を誤ったらしい。パイロット2人は落下傘で脱出して無事だった。

 私は、煙が上がっている方向へ急ぎ足で向かったが、早くも向こうから事故を起こしたパイロットが人びとにかこまれて歩いてくるのに出会い、「なんだ、つまらん」と思って引っ返したのを憶えている。

 このときは事故機のパイロットが歩けるほどだったから「つまらん」と思ったが、遺体になって戸板で担がれてくるような場面であれば、そんな不謹慎なことを思うはずがない。

 (西川 渉、2013.6.14)

【追記】

 本稿を書き終わって数時間後、夜の食事を終わってエアバスのホームページを見たところ、A350がまぎれもなく初飛行に成功し、パソコン画面の中を飛んでいた。生中継の画面である。無事に着陸したのは日本時間の14日午後9時6分。離陸時間は、途中からだったので、よく分からぬが、日本時間の午後5〜6時頃だったであろう。

 

 

 

 

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