大統領失神

 

 

 日本ではお正月になると、餅を喉に詰まらせて救急車で運ばれたり、死んだりする人が出るが、アメリカではプレッツェルを喉にひっかけて失神するらしい。

 あのスナック菓子は、アメリカのエアラインに乗るとよく配ってくる。ハート形に腕組みをしたような形で、なるほどカリカリに固く乾いていて塩辛く、ビールのつまみには合いそうな気がする。けれども、それで気絶するとは思わなかった。目を覚ますと2匹の犬が心配そうに、あるいは不思議そうに大統領の顔をのぞきこんでいたという。

 大統領はひとり居間でくつろぎ、2匹の愛犬(名前はバーニーとスポット)と共に、プレッツェルをかじりながらフットボールのテレビ中継を見ていたらしい。ローラ夫人は隣の部屋で本を読んでいたと新聞には書いてある。

 どこの家庭にもありそうな平凡な光景で、よく言えばほほえましく、悪く言えば大統領もこの程度かということになろうか。おまけに倒れるときにテーブルの角に顔をぶつけて、めがねが吹っ飛び、頬に傷をつくったようで、当たりどころが悪ければ大変なことになっていたかもしれない。

 2日後、外に出てきたときは記者団に「ママの言うことを聞いて、よく噛めばよかった」などと冗談を飛ばし、遊説のために乗ったエアフォースワンの中では「よく噛んで食べるように」と書いたプレッツェルの大きな袋が記者団に配られたらしい。

 自らの失態をジョークでまぎらわせようという魂胆だろうが、そのジョークを受けてロンドンのマダム・タッソー蝋人形館では、ブッシュ人形の顔にすり傷を描き入れ、その手にはプレッツェルの袋を持たせたとか。


(ブッシュ人形の顔にすり傷を描く)

 これら一連のニュースを聞いていて、なんだか気の毒を通り越してマンガみたいだと思っていたが、案の定アメリカではこの話題を材料にしたマンガが新聞各紙に大量に掲載された。その一部をここに拾ってみると次のようになる。


(「寝たのかな?」「死んだんじゃないの?」)


(欲張り「でか過ぎたんだよ」)


(「なんだ、こんな手があったのか」)

 
(「次は炭疸菌の代わりにプレッツェルを送ろうぜ」) 


(ホワイトハウス入り口「凶器発見」) 


(シークレット・サービス「危険物だあ」)


(ホワイトハウス前「大丈夫です、ソフト・プレッツェルでした」)


(シークレット・サービス「もっと続けて」――カミカミカミカミ……)


(「食べ過ぎると腸捻転を起こします」)


(遺伝「わしも昔、日本で同じことをやったよ」)

 
(エンロン問題「大統領がまた失神しました」)

(害無笑、2002.1.19)

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