スイス・エアレスキューREGA

欧州救急3機関の固定翼機

 

 

 スイス・エアレスキューREGAは9月26日、カナダのボンバーディア・チャレンジャーR604ビジネスジェットを3機発注した。この3機を、REGAは長距離救急搬送のために使う計画。

 REGAはこれまでもチャレンジャー601-3Aを使ってきた。新しいチャレンジャーは最新の救急医療設備を装備、ストレッチャーは患者2人分をのせることができる。

 最初の2機は来年6月、3機目は11月に引渡される。医療装備はスイスのエアロライト・マックス・ブーヘル社が取りつける。

 REGAによれば、チャレンジャーを選定した理由として、胴体幅が広く、医師や看護婦による機内の医療行為もしやすいという。

 このビジネスジェットで、REGAは世界中を飛び回り、スイス人が世界中どこで病気になっても迎えにゆくという患者搬送にあたっている。またスイス国内では、外国人の救急も平等におこない、救急対応は24時間体制を取っている。

 REGAは、本頁でもご報告したように今年6月にチューリッヒ・クローテン空港の本部を訪ね、飛行機が並んでいるところを見学したばかりである。格納庫の中には2機のホーカー800が待機しており、チャレンジャーは搬送業務のために中東へ飛んで行ったあとだった。

 今回の新鋭チャレンジャー3機の発注は、これら現用3機の入れ替えかと思われるが、そのあたりははっきりしない。新しいチャレンジャーは航続距離7,550kmという長距離飛行ができるので、いっそう自由に世界中を飛び回るのであろう。

 チャレンジャーR604は基本価格が2,200万ドル(約25億円)。3機で75億円にもなる。そのうえREGAは6月のパリ航空ショーでも4機のEC145ヘリコプターを発注している。赤十字に準じる非営利の救急業務で、公的な補助もないのに、何故このような潤沢な資金があるのか。その秘密は後日ご報告したい。

 REGAの飛行機と同様、そのあとで訪ねたドイツADACやフランスSAMUでも長距離の国際帰還搬送に飛行機を使っている。その使用機を整理すると下表の通りとなる。

 

欧州救急3機関の使用する固定翼機

救 急 機 関

使 用 機

備   考

スイスREGA

チャレンジャー601×1機
ホーカー800×2機

自己所有機。これとは別に、上述の通り、チャレンジャー604を3機発注ずみ

ドイツADAC

ホーカー1000×1機
リアジェット35A×1機
ビーチ・スーパーキングエアB350×1機

別の民間企業から借り上げ運用。胴体はADACカラーに塗装されている。

フランスSAMU

ファルコン・シリーズ(900、50、20、10など)
サイテーションU×2機
リアジェット35×2機
ビチ・キングエア2000×2機
メトロV×4機

左の機材はパリ・ルブールジェ空港にある民間航空企業の保有機。SAMUは必要の都度この中から適機を選んでチャーターし、救急要請のあった現地へ派遣する。

この会社は出動要請から90分以内に世界中どこへでも飛んで行く体制をととのえて待機している。

(西川渉、2001.10.1)

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