民間航空機数の推移

 平成元年以来、この10年間に日本の民間機数はどのように変わってきたであろうか。運輸省の登録台帳を見ると、次の表のように推移してきたことが分かる。

 平成10年3月末現在の登録機数は、飛行機とヘリコプターを合わせて2,245機であった。うち飛行機が1,237機で55%、ヘリコプターが1,008機で45%である。一時はヘリコプターの多い時期もあって、下表をよく見ると、たとえば平成3年はヘリコプターが1,156機で、飛行機が1,154機であった。まずは同数というべきだが、わずかながらヘリコプターの方が多い。それが不況の深刻化と共に減少し、比率もまた下がったのである。

日本の民間機登録機数(平成年間の推移)

毎年3月31日現在

ヘリコプター

レシプロ軽飛行機

ターボ
プロッ
プ機

ジェッ
ト機

レシプロ

タービン

合 計

単発機

双発機

合 計

平成元年








10

1989年
90
91
92
93
94
95
96
97
98

219
246
245
256
252
233
223
221
231
204

697
802
911
938
881
844
813
820
808
804

916
1,048
1,156
1,194
1,133
1,077
1,036
1,041
1,039
1,008

580
597
616
626
646
631
617
613
613
601

109
104
103
102
101
99
90
84
79
78

689
711
719
728
747
730
707
697
692
679

145
148
151
158
150
150
151
151
141
133

245
265
284
314
324
337
358
378
390
425

倍率(98年/89年)

0.93

1.15

1.10

1.04

0.72

0.99

0.92

1.73

 さて、ここで申し上げたいことは、そんなヘリコプター対飛行機の多いか少ないかといったことではない。ジェネラル・アビエーションとエアラインの問題である。

 上表によれば、ヘリコプターも軽飛行機もターボプロップ機も、平成4〜5年頃に最大数となり、それから再び減少している。その原因は主としてバブル経済の崩壊によるものであろう。この10年間に、ヘリコプターは辛うじて増えたものの、軽飛行機は、特に双発機が大きく減少した。単発機はやや増えたけれども、全体では少なくなってしまった。ターボプロップ機の減り方はさらに大きい。

 こうして、バブルがふくれて、またつぶれた中で、真っ直ぐ伸びてきたのはジェット機だけである。この中には10機余りのビジネス機が含まれるが、大半は大手エアラインのジェット旅客機である。何と、この10年間に1.73倍という素晴らしい成長ぶりを見せている。

 その背景にあるのは乗客数の伸びである。もう一つは政府の保護政策であろう。しかし、収益も同じように伸びてきたかどうかは分からない。というのは近年、割引き競争が激しくなってきたからで、収益の苦しい時期もあったはず。これから保護政策がなくなり、競争が激化してゆけば、運賃単価はさらに下がって、収益はいっそう苦しくなるであろう。つまり背丈はひょろひょろと伸びたが、骨太肉厚というわけにはゆかず、体質は今後ますます弱ってゆかざるをえないのである。

 こうして、航空機の数だけを見ても、小型機の世界は十年一日、抑えつけられたような状態であった。それに対して、エアライン業界だけは背伸びをしたように伸びてきた。風当たりが強くなるのも止むを得ない。

 本当は、しかし、そうした風当たりに向かって、ジェネラル・アビエーションもエアラインも相互に支え合わなければならない。二つの世界が同じ空を共有しながら、両者同じような割合で伸びてゆくのが健全な姿ではないだろうか。

(西川渉、98.8.20)

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