<ファーンボロ2008>

女王のヘリコプター

 

 ファーンボロ航空ショーの初日、イギリス王室がシコルスキーS-76C++を発注し、S-76Dを仮発注したことが発表された。現在はS-76C+を使っているが、2009年8月から切り替えるという。

 S-76C+は、これまで女王を初め、ロイヤルファミリーの移動に乗用機として使われ、快適で高い信頼を得てきた。これを、さらに改良型のS-76C++に買い替えようというもの。

 同機はエンジン、内装、アビオニクス類が良くなっている。特にエンジンはターボメカ・アリエル2S2で出力が強化され、主ギアボックスは音が小さくなり、キャビン内部も静かになった。型式証明はすでに2006年1月に取っている。

 なおS-76は今年、引渡し開始から30年になる。この間の飛行時間は500万時間を超え、今年末には量産数700機に達する予定。

 英王室はS-76のほかにも、BAe146とHS125を使用し、いずれも空軍の特別部隊が運航している。BAe146四発機(19〜23席)は2機、HS125双発ビジネスジェット(最大7席)は5機だが、その任務の大半は英首相や閣僚たちの飛行で、王室の仕事は2割程度という。日本の政府専用機が皇室と首相、閣僚の間で共用されているのと同様といえようか。

 やや古い数字だが、2004年度、BAe146の王室飛行時間は218時間、HS125は230時間、S-76は約400時間であった。

 イギリスの王族が航空機で飛ぶようになったのは1936年、キング・エドワード8世のときからであった。またヘリコプターが初めて使われたのは1954年で、機種はウェストランド・ドラゴンフライ。それが1958年、ウェストランド・ワールウィンド2機に変わり、69年にはウェストランド・ウェセックス2機となって、30年近く使われた。2機を合わせた飛行回数は1万回を超え、1998年4月1日から今のシコルスキーS-76C+が使われている。機数は1機だけである。

 かくて、イギリス王室はアメリカ製のヘリコプターを使用し、アメリカの大統領はイギリス製のヘリコプター(EH101)を使うことになる。

 

【関連頁】

 イギリス王室御用達(2003.6.9)

(西川 渉、2008.7.16)

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