パリの救急機関SAMU94

―― Page 1(全3頁) ――

 

 パリの地図を見ると、やや横長の四角い地域を右下隅から左下隅へ向かって、大きく弓なりにセーヌ川が流れる。弓なりの頂点はちょうど地図の中央、すなわちパリの中心部にあたり、そこにルーブル美術館、チュイルリ公園、コンコルド広場が直線上に並ぶ。

 コンコルド広場から地図の左上、北西の方向へ伸びるのがシャンゼリゼ通りで、つきあたりにエトワール、すなわち凱旋門がある。その凱旋門をくぐって、さらに北西へシャルル・ドゴール通りをまっすぐ進むと、新しい副都心、ラ・デファンス地区に入る。近代的な高層ビルが建ち並ぶ中でひときわ目立つのが新凱旋門、巨大なグラン・アルシュである。

 もう一度パリ中心部に戻り、弓なりのセーヌに沿って左へゆくと、南西方向への曲がり角にエッフェル塔が建ち、さらに下流へ下ると地図の左下にパリ・ヘリポートが存在する。

 逆に、セーヌの流れを上ってゆくと、中心部から右下方へ曲がる角にノートルダム寺院をのせた船形のシテ島があり、さらに右下へ進むと超近代的な大蔵省の建物が見えてくる。その屋上に円形のヘリポートがあるのは、おそらく緊急用だろうが、ひょっとして金銭輸送などを考えたのかもしれない。もっともパリ市内は、救急ヘリコプターや警察、消防のヘリコプターが緊急目的で飛ぶ以外は飛行禁止になっている。

 その救急ヘリコプターを擁するアンリ・モンドール病院は、上に見てきた地図の右下に外れた辺りに位置する。地下鉄8番線の終点、クレテール駅の付近かと思われるが、今回はユーロコプターの車で連れていってもらったので、よくわからない。

 以上の地理的関係をおさらいすると、環状道路に囲まれたパリ市街地はセーヌ川が南東から南西へ向かって弓なりにつらぬき、上空は飛行禁止になっている。その禁止区域に隣接する南西部にパリ・ヘリポートがあり、反対側の南東部にアンリ・モンドール病院がある。

 アンリ・モンドール病院の駐車場を覆うようにつくられたヘリポート。写真中央の円く見える部分がそれで、そのヘリポートに向かって写真左側の本館2階から廊下が伸びる。廊下の左右には部屋があって、SAMUの救急電話受付け室、医師やパイロットの待機室などがある。緊急時には各人部屋を飛び出せば、廊下の突き当たりにヘリポートがあるという構造である。


(ヘリポートにはヘリコプターの待機しているのが見える)


(本館2階に上がると、ヘリポートへの廊下入り口にSAMU94の看板。
実働部隊SMURの文字も)


(廊下の突き当たりからヘリポートに出る。
白い塗装に15番の救急電話番号を記したEC135が待機していた)


(ヘリコプターの内部。意外にあっさりしていて、ごてごてした装備ではない)

(西川 渉、2001.7.12)

次頁へ

『航空の現代』表紙へ