<シンガポール>

航空ショーを見る

 2月2日から始まったシンガポール航空ショーを見てきました。頭の中がまだ整理されていないため、まとまったものは書けませんが、チャンギ(樟宣)国際空港の旅客ターミナルから滑走路をはさんだ反対側に大きな展示会場ができていて、おそらくは自動車ショーやコンピューターショーも開催されるのでしょうが、今回は航空宇宙関連のおよそ800社が屋内展示、屋外には50機余りの航空機が並んでおりました。

 実飛行は11時頃から13時頃まで。定期便の合間をぬって飛ぶので、パリやファーンボロのように1日中というわけにはゆきません。10年ほど前のシンガポールでは、展示飛行中は例えば2時間ほど定期便の発着を止めるということでしたが、今回は完全に止めるわけではないようです。しかし定期便への影響は避けられず、旅客機の発着が遅れることもあるという話を聞きました。

 チャンギ空港は東南アジアのハブとして1日の発着回数が平均635回(2008年)。成田空港よりも多いわけですが、そんなところで航空ショーをやろうというのですから、その発想は大胆かつ積極的というほかはありません。成田などは曲技飛行どころかビジネス機やヘリコプターの発着も殆ど認めておりません。シンガポールの旺盛な意欲、柔軟な発想、活発な活動ぶりが強く感じられます。

 なにしろ日本の淡路島くらいの都市国家で、人口は500万人弱。あらゆる工夫をこらして世界中から人を集め、国の繁栄をはかろうという基本方針の下、外国人の技術者や学者などの滞在を優遇したり、外国企業や合弁会社の税金を安くしたり、さまざまな工夫をこらした政策がとられています。その一環が航空ショーというわけです。


シンガポール目抜きのオーチャード通りにも、
航空ショーの小旗が多数並んでいた。

 日本の地方空港も定期便の減少をなげくだけでなく、思い切った積極策を考えてはどうでしょうか。どうせ閑古鳥が鳴いているのであれば、横浜の屋内展示だけで国際航空宇宙展などとお茶を濁すのではなく、ヘリコプターやビジネス機はもちろん、世界中の戦闘機や旅客機を飛ばすくらいの積極策が必要です。

 これならばオリンピック誘致と違って、外国勢と競争したり国際委員会の承認を取る必要もありません。うまくゆけば外国からも大勢の関係者や観客がやってきますから、さびれかけた地方都市の起死回生にもつながるのではないでしょうか。

 さて、展示飛行は定期便と同じチャンギ空港で隣合わせにおこなわれますから、さほどの時間は取れず、飛行する機体も少ないわけですが、その中から何枚か写真をご覧いただきます。

 とはいえ、赤道直下の正午をはさんで、真昼の炎天下での写真撮影は、しばらく立っていると熱中症でぶっ倒れるのではないかと思うほどで、頭がクラクラしてきます。そこへ矢のように高速で飛んでくる戦闘機を余り性能の良くない素人カメラで追いかけるのはなかなか大変で、シャッターがおりたときは機体が画面の外へ飛び出し、尻尾や煙しか写っていなかったといった結果がほとんどです。

 そうした失敗写真を何十枚も撮った中から偶然、画面に残ったものを見ていただきます。


飛行演技は空港の沖合、海の上でおこなわれる。
これならば安全だし、観客はそれを海岸から見ることになる。
日本にも同じような条件の地方空港があるのではないか。


同じ速度で飛ぶ超音速戦闘機機とヘリコプター。
この演技には吃驚した。はるか彼方からF-16戦闘機と
アパッチ攻撃ヘリコプターが並んで飛んでくる。
戦闘機は機首を上げてホバリング状態を長く保ちながら
ゆっくりと、ヘリコプターと同じ速度で前進してきたのである。


シンガポール空軍の採用をめざす
イタリアのアエルマッキM-346亜音速双発ジェット高等練習機。


超音速の韓国製T-50単発ジェット練習機ゴールデン・イーグル。
これもシンガポールへの売りこみをはかって懸命の演技を見せた。
つまりイタリアと韓国の競争である。

(西川 渉、2010.2.6)

 

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