<中  国>

新攻撃ヘリコプター

 やや旧聞になるが、昨年11月の中国珠海航空ショーで、新しい攻撃ヘリコプターZ-10が初めて公開された。

 このショーでは、Z-10よりもやや小ぶりのZ-19も登場したが、両機ともに飛行中の姿を見せただけで地上展示はなく、観客にとって詳しいことは分からなかった。Z-10はショーの期間中、連日デモ飛行を見せたが、Z-19は2度の飛行をしただけだったという。

 この2機は、どちらも前後2席のタンデム構造で、機首に球形のターレットがある。また胴体には短固定翼がつき、これに火器取りつけ用のパイロンがついている。

 Z-19の基本となったZ-9は、ユーロコプターAS365ドーファンを基本とするもので、4枚ブレードの主ローターや11枚ブレードのフェネストロンなど推進システムは、ドーファンのものをそのまま流用している。エンジンは中国製のWZ-8Aターボシャフト(848shp)が2基。

 その発達型Z-19は、武装偵察と斥候が主要な任務であろう。同機には機関砲がなく、翼のパイロンに装備したミサイルやロケットだけが武器である。

 一方、注目のZ-10は全く新しい設計で、シナ語では「直−10武装直升机」と書く。「升」は「昇」の簡体、「机」は「機」の簡体字である。つまり「直升机」は「直昇機」で、すなわちヘリコプターというわけだ。しかし、この直升机の開発は珠海航空ショー以前にはほとんど知られていなかった。したがってショー会場の上空に同機が姿を見せたときは、観客を大いに驚かせた。外観はアグスタウェストランドA129マングスタに似ている。デモ飛行では、操縦性能や運動能力、さらには急上昇性能、後方飛行性能、ホバリング時の運動能力などにすぐれていることを感じさせた。

 中国の新聞やテレビなどの報道によれば、Z-10はすでに生産段階にあり、部隊配備もなされているという。ただし確認されたわけではない。

 Z-10の主ローターは5枚ブレードだが、Z-9のそれとは異なる。尾部ローターもX状の4枚ブレードで、フェネストロンではない。またブレード自体も古典的な形状をしており、最近のもののように先端を切り落としたような形ではない。

 エンジンは中国製のターボシャフト(2,010shp)という。しかしショーに登場した機体はウクライナ製のTV3-117をつけているように見えた。

 胴体左右の短固定翼は、それぞれ2カ所に火器取りつけ用のパイロンがある。また機首には機関砲があって、大きさは12.7ミリないし23ミリのように見える。その戦闘任務は味方地上部隊の支援と対戦車攻撃であろう。

 こうしてみると、Z-10武装ヘリコプターは中国初の近代的な攻撃ヘリコプターであり、中国固有の設計になり。西側世界のどの武装ヘリコプターにも負けない高水準の新しい軍用機がまたひとつ加わったということであろう。

 かくて中国軍は、仮想敵国をアメリカとしながら、当面は日本を蹂躙し占拠することを想定しつつ、武装ヘリコプターの実戦配備を急いでいる。これを、改修なった中古の旧ソ連製空母に搭載し、尖閣諸島でも沖縄でも日本本土でも、どこにでも持ってきて上陸作戦を支援しようというらしいが、自衛隊はどこまで反撃できるだろうか。 

 ちなみに、Z-10の伝えられる主要データを、日本のAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターと比較しながら一表にすると、次のようになる。もっとも、一部は上の数字と異なるところがあり、正確なデータは不明。

 なおアパッチは現在、陸上自衛隊の配備が10機になったであろうか。実数はよく分からない。というのも、本来は62機を調達する計画だったが、政府のゆきあたりバッタリの防衛計画により途中で打ち切られてしまったからだ。

 情けないことに日本政府は、最近まで本気で国土を防衛する気概がなかった。これぞ中国の思うつぼで、向こうは密かに、というよりは白昼堂々と日本侵攻の準備をととのえつつあるというべきであろう。

項  目

Z-10

AH-64D

主ローター直径(m)

12

14.63

全長(m)

14.1

17.76

全高(m)

3.85

4.3

総重量(kg)

5,500

10,432

空虚重量(kg)

?

5.352

エンジン

PT6C-67C

GE T700

出力(shp)

1,531×2

1.940×2

最大速度(q/h)

300

365

巡航速度(q/h)

250

265

実用上昇限界(m)

6,000

6,400

航続距離(km)

800

482

乗員(人)

2

2

機関砲

30mm

30mm

ミサイル

対戦車または空対空

対戦車ミサイル8発

〔注〕Z-10の航続距離は、回航距離

(西川 渉、2013.3.25)

 

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