驚異のティルトローター輸送機

――ベル社のニュー・アイディア――

 

 

 この奇妙な軍用輸送機は何か。実は、5月25〜27日の3日間カナダのモントリオールで開催された国際ヘリコプター学会AHS年次大会に展示されたベル社のアイディアである。

 胴体はC-130-30と同程度というから100人前後の兵員搭載が可能。その前方と後方に2つの固定翼をつけ、固定翼の両端にティルトローターを取りつけるというもの。

 このローターは現用V-22のダイナミック系統を流用する。したがって特別新たな開発費がかからず、コストは安くなる。リスクも少なくて、開発に要する期間も短い。

 前後のローターは相互に干渉しないよう、前方の翼がやや短くなっている。また前後2枚の翼があるから、当然のことながら最後尾の水平尾翼は要らない。

 総重量は垂直離陸をするときが45トン余り、短い滑走離陸をする場合が65トン程度という。ちなみにC-130は総重量が70トンほどでペイロードは17トンを超えるが、それを持ち上げるために長い滑走路が必要であることはいうまでもない。

 またエンジン出力はV-22オスプレイが1基あたり6,150shpだから、このティルトローター輸送機は4基合わせて24,600shpになる。一方、C-130は4,500shpが4基だから18,000shpである。つまりティルトローター機の方が35%ほど多くの出力を必要とするわけで、これがVTOL能力の代償ということだろうか。

(西川渉、99.6.5)

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