<アグスタウェストランド>

ダビンチ・ヘリコプター

 

 アグスタウェストランド社は3月4日、新しいダビンチ・ヘリコプター計画を明らかにした。現用A109グランド軽双発ヘリコプターを基本としてスイスREGAのために改良、アルプス高地の救急と救助に使うのが目的。

 そのため高々度性能が良くなり、長距離の病院間搬送にも使えるよう速度性能を上げている。またキャビンを拡大し、ストレッチャーに横たわった患者の搭載など、救急救助機としていっそう使いやすくなったという。

 さらに、最新のアビオニクスを取り入れた。たとえば二重の4軸ディジタル自動操縦装置(AFCS)、飛行管理システムを組みこんだ電子飛行計器システム、立体視の可能な地形近接警報システム(TAWS)、航法および通信のための無線管理システム、ユーロナブ・ディジタル・マップ、夜間暗視装置(NVG)など。

 この開発計画は2006年、REGAの徹底した評価審査によって合意され、確定11機、仮4機の発注と共に決定した。

 アルプスの峻険な山岳地で危険をおかして救助活動にあたるための機材として選定されたダビンチ・ヘリコプターは、1989年に採用されたA109K2と共に、アグスタウェストランド社のすぐれた技術力を示すもの。21世紀の山岳救助に飛躍的な効果と能力を発揮するであろう。


アグスタウェストランド社が公表したダビンチ・ヘリコプター
塗装はREGA向けになっている。

 余談ながら、このニュースに関する話題は昨年5月、プラハで開催された国際航空医療学会AIRMED2008で聴いた。REGAのパイロットが講演の中で、彼らの欲しいヘリコプターが如何なるものか詳しい飛行性能を挙げながら語ったものである。

 その望ましいヘリコプターについて、REGAの現在の飛行任務――2007年の9,949件という出動を昼か夜か、平地か山岳地か、ホイストを使ったか否か、標高はどのくらいだったかなどで分析、さらに細かく離着陸時の搭乗者数、機体重量、飛行時間、気温などの要素を考慮して、アグスタ機に限らず、どのようなヘリコプターがREGAの任務に適するかを検討したという話である。

 もとより運航費や機体価格の問題があるので、一足飛びに大型機というわけにはいかない。かといって、今のA109グランドでは条件に合わず、尾部ローターの制約があるのでエンジン出力だけを無闇に上げるわけにもいかない。なんとかして機体重量を下げるほかはないといった話だったが、こちらの英語力の問題か、演者が故意にぼやかしたのか、あのときは結論がはっきりしなかった。

 しかし、上のニュースを聞いて、答えはダビンチ・ヘリコプターということだったのかと思いあたった。けれども今も詳しい数字が見つからないので、エンジン出力や機体重量がどうなったのか、まだ分からぬままである。

 いずれにせよ、アグスタウェストランド社からまたひとつ新しいヘリコプターが登場したと見てよいだろう。

 
アルプスの遭難救助に向かうREGAヘリコプター

(西川 渉、2009.3.9)

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