保安検査の強化策

 

 

 テロに使った旅客機をハイジャック犯たちが乗っ取ったときの凶器は何だったのか。空港の金属探知器でも見つからぬような小さなナイフかボックスカッターだろうと推測されている。そのためアメリカでは、空港の保安検査をもっと厳重にすべきだという論議がいっせいに高まった。

 しかし、入り口の検査を如何に厳重にしても、機内には沢山の凶器が積みこまれているではないか。機内食と一緒に出てくるナイフやフォークがそれで、凶器として使おうと思えばできるはずとテレビで語っている人がいた。とすれば今後、飛行機ではナイフを使わなくてすむような食事を出さなければなるまい。

 中東ではカレーライスや焼きめしのようなものを指先でこねくり回して食べるそうである。あれならば何も使わなくてすむ。さては今回のアラブ人によるテロはアラブ料理を機内食に採用させるための陰謀だったのか、などといえば不謹慎だと叱られるだろうか。

 もうひとつは日本料理で、これもナイフやフォークを使う必要はない。第一、味も良いし、ふだん油っこいものを食っている人にはダイエットの一助にもなる。にぎり寿司などはもともと手で食べるのが作法であった。

 もっとも機内食が和食だけになると、箸を使えない人はその練習をしてからでないと飛行機に乗れないなどということになるかもしれない。

 さて空港の保安対策の強化に関連して、AIRJET AIRLINE WORLD NEWSというメールマガジン9月16日号が、いくつかの提案をしている。次にその一部をご紹介しよう。

1 空港職員や航空会社の職員は乗務員同様、空港内の制限地区に入るときは、保安チェックを通ってから入るようにすべきである。特にランプ作業員は、そうすべきだ――まことにその通りで、これら地上員が爆弾を仕掛けたり、凶器を手渡したりした例は、これまでもあった。

2 今すぐに空港の立ち入り証(バッジ)をつくり直し、機械的に再発行するのではなく、必要な者は新たに申請させる――これにより改めて各人の身元調査などが可能になる。

3 空港職員や航空会社の職員は過去10年間の経歴についてFBIの調査を受ける――それもランプ作業員から始めること。なおかつ航空会社が代わりに調査するのでは不充分と、この提案はいう。

4 空港職員や航空会社の職員はFBIの指紋チェックを受ける――これまた航空会社が代わりにやるのはよくないとしている。

5 空港職員や航空会社の職員として新たに採用されるものはFBIもしくは然るべき国家機関の経歴チェックを受ける。

6 空港の敷地内に入る車は全て入り口で保安検査を受ける――成田空港では開港以来やってきたことではないかと思うが、評判はあまりよくなかった。

7 手荷物などの保安検査は、今の警備会社に代わって軍隊または警察がおこなう。それも充分な訓練を受けて武装したものとする。

 

 先日の新聞には、ノースウェスト航空が米国内のある空港で、客のふりをして小型ナイフとドライバーを隠しもって機内に入る実験をしたところ、保安検査を簡単に通り抜けることができたという。むろんテロ事件の後のことで、これだけ騒がれていても手ぬかりがあるのだ。

 アメリカでは過去10年間、国内線のハイジャックはなかったらしい。それが警備のゆるみにつながったのかもしれぬが、10年目に起こったことは4機いっぺんにハイジャックされるという大事件であった。

(西川渉、2001.9.21)

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