<高速実験機>

パイアセッキX-49Aが初飛行

 米パイセッキ社が開発中の米陸軍向けX-49Aコンパウンド・ヘリコプターが6月30日に初飛行した。シコルスキーYSH-60Fを改造したもので、「スピードホーク」と呼ばれる。

 尾部に推力変更の可能な「ベクタード・スラスト・ダクテッド・プロペラ」(VTDP)を取りつけ、胴体左右に短固定翼をつけたもの。VTDPは「リングテール」とも呼ばれ、前向きの推力増強に使われ、固定翼は主ローターにかかる荷重を軽減して、その分だけ速度が増加する。初飛行は15分にわたって行なわれ、ホバリング、ホバリング旋回、低速前進、横進などの飛行を試みた。

 パイアセッキ社は1960年代、16H-1とか16H-1Aと名づけたリングテール実験機をつくり、360km/hの速度を記録した。その同じ原理をH-60に応用するため、2000年10月に開発契約が結ばれた。

 現状はH-60本来のエンジン2基(2,100shp)が使われているが、今後はVTDPを駆動するための第3のエンジン(600〜700shp)を取りつけ、370km/hの高速実験に挑む。

 パイセッキによれば、通常のヘリコプターは主ローターだけで上向きの揚力と前向きの推力を発揮しているが、重量が増すとローターの力が揚力だけに取られて、前進速度が落ちる。ローターにかかる荷重の大きなヘリコプターが高速で失速するのはそのためで、UH-60なども高温・高地のアフガニスタンなどでは160km/h程度の速度しか出せなかった。

 「スピードホーク」の実験は、その点を解消するのがねらいで、当面100時間の試験飛行を行ない、最終的に370km/hまで2倍以上の速度を実現する予定。

(西川 渉、2007.7.13)

表紙へ戻る