<野次馬之介>

A380と座席の快適性

 去る11月21日まで5日間にわたって開催された中東ドバイ航空ショーでは、エアバス、ボーイング両社ともに大量の注文を獲得して、大いに盛り上がった。その話題のひとつとして注目されたのが、A380超巨人旅客機が大量50機の注文をエミレーツ航空から受けたことである。

 これでエミレーツのA380に対する発注数は総計140機となり、同機の総受注数309機のほぼ半分を占めるに至った。エミレーツは、これまで90機を発注しており、すでに39機を受領して運航している。

 またA380は、これまでに115機が引渡しずみ。2014年は30機の引渡しを予定し、当分は安定した量産態勢となり、この調子で進めば2015年にはA380製造の採算分岐点に達すると見られる。


ドバイ航空ショーとA380

 ところでエアバス社は先般来、客席の快適性に関する調査研究を進めてきた。最近の調査結果では、快適な乗り心地を決める要因は座席幅が最も重要という。特に長距離飛行では、従来のような幅17インチ (43.18センチ) の座席では窮屈で、快適性を増すためには18インチ(45.72センチ)に広げる必要があるとしている。

 たしかに座席幅が狭いと窮屈なばかりか、腕をちょっと動かしただけで隣人の腕にぶつかり、肘掛けの取り合いとなって、まことに不愉快な思いをする。とりわけ体の大きな人が隣席にくると、太い腕に押されて縮こまる結果となり、我慢するのが大変である。

 しかし馬之介にとっては、前席の背もたれがこちらへ倒れてくるのがもっと問題。いつぞやもシンガポールから東京まで、せっかくA380に乗ったはいいが、前席の客が背もたれを大きく倒してくるので、膝の上にパソコンを置くこともできず、本を読むには体を窓側に向かって横向きにせざるを得ず、往生したことがある。

 座席の幅よりも、背もたれが倒れないようにして貰いたいと思っていたところ、先日、成田からシカゴへ飛んだ全日空の777は、まさにそうなっていた。肘掛けのボタンを押すと、お尻をのせるクッションが前方へせり出すだけで、背もたれは動かない。これは昔の国鉄の2等席と同じで、当時もクッションだけが動く仕掛けであった。

 全日空機には足掛けもついていて、ある程度は体を斜めにすることができる。これ以上に斜めになりたい人はビジネスクラスでもファーストクラスでも、好きなところに乗れば良いのである。

 とにかく背もたれが動かないのは、自分にも後席の人にも都合が好い。スチュワデスもいちいち「リクライニングをお使いになるときは、後のお客さまにご配慮願います」などと、よけいな放送をしなくてすむ。

 しかし残念ながら、帰りのシカゴ発成田ゆき全日空便は、旧い777だったせいか、背もたれの倒れる座席であった。もっとも、乗客が比較的少なくて、肘掛けの取り合いも背もたれの圧迫もなく、左右3人分の座席に横になって寝てくることができた。

 ただし、この路線に人気がないわけではない。全日空の最近の発表によれば、 成田〜シカゴ線は9月から週14往復の倍増効果で、座席利用率が70%以上になったらしい。馬之介の乗ったのは10月下旬だったが、幸いにもキャビン後方に空席が多かったのである。

 これぞ、最高のフルフラットと云ってよかろう。

(野次馬之介、2013.11.24)

 

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