<野次馬之介>

膝小僧をかかえて飛ぶ

 

 日本航空がこの新年から国際線長距離便の座席を、乗り心地の良いものに改めるという。前後間隔(ピッチ)を広げ、ファ―ストクラスやビジネスクラスでは完全に横になれるフルフラットを採用するらしい。

 しかしピッチを広げると、座席数が減少する。たとえばボーイング777ではファーストクラスは9席が8席になり、ビジネスクラスは63席が49席、エコノミーは200席が175席に減少、合計では272席が232席に減る。これだけ座席数が減って、収入を確保できるのかという心配や非難の声も聞かれる。

 非難というのは、この3年ほどの間に多額の公的資金を注ぎこんで再生し、上場すら果たしたばかりだからである。他の主要エアラインがフルフラットを導入し始めた数年前から、日航だけは財務内容が悪いために座席の改善すらできなかった。その時代を思えば、早くも贅沢病にかかったかというのが、特に競争相手の思うところであろう。

 しかし日航の反論は、座席数が減れば利用率が上がって単価が上がるから、それでいい。これで格安航空会社(LCC)の攻勢にも対抗できるというのである。ということは豪華を売りものにして、運賃も上げるという意味だろうか。


日航の発表した豪華ファ―ストクラス席

 ところで最近の英エコノミスト誌が下のようなマンガを載せている。座席のピッチを広げて足もとを広げる。これで「足もと料」を取って収入を上げるというのだ。まさに贅沢な座席をつくって運賃を上げるという方策だが、トバッチリを食った後席の客は、膝小僧をかかえて我慢しなければならない。

「どうしてここだけ狭いんだ」という苦情が出るのは必至で、そのときはお酒をタダにするとか、ファーストクラスの食事を出すというのかもしれない。あるいは「マイレージの得点を2倍にします」というテもある。結局はコストが上がってしまうのではないか。

 いずれにせよ、エアライン事業は、日航の経営破綻と短期間の再生に見るように、浮き沈みが激しく、なかなかにむずかしい。大地に足がついていないせいであろうか。

 (野次馬之介、2012.12.28)

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