<ウィングレット>

翼端競争

 近頃は燃料価格の高騰により、エアラインは一滴でも多くの燃料を節約したいと考えるようになった。主翼先端に取りつけるウィングレットはそうした動きに呼応するものといえよう。

 そこで、ボーイング社は目下開発中の737MAXについて、主翼先端に発達型のウィングレットを装備することとした。翼端の上下に小さな三角翼を取りつけるもので、燃料消費を1.5%ほど減らすことができる。これに他の改良点を合わせると、737MAXの燃費は従来の737にくらべて10〜12%減ることになるという。

 ボーイング社によれば、これまでのウィングレットをさらに大きくした場合、燃料効率が良くなる一方で、重量がかさみ、効果が相殺される。それに対して翼端下面に三角形の小翼を加えるようにすれば重量増加は最小限ですますことができる。

 ボーイング737MAXは、最近までに451機の注文を受けており、2017年に就航の予定。


翼端上下に小翼をつけたボーイング737MAX(想像図)

 一方エアバス社は、新しいA320に従来のウィングレットを大きくした「シャークレット」を装備する。その試作初号機は、このほどエア・ニュージランド向けの機体としてロールアウトした。

 エアバス社によれば新しい大型ウィングレットは、従来のA320にくらべて、長距離区間では少なくとも3.5%の燃料節約になる。これで離陸推力を減らしたり、離陸重量を増やしたり、エンジンの整備コストを2%ほど節約したりすることが可能で、ペイロードを増やし、航続距離を伸ばすこともできる。また離陸時の騒音軽減や、上昇性能の向上にもつながるという。

 ウィングレットは主翼先端から離れた空気を再びとらえて、揚力を増やす効果をもたらす。これで主翼スパンを伸ばさずに、主翼面積を拡大したのと同じことになるので、結果として燃料効率が改善される。

(西川 渉、2012.5.7)


ボーイング787のウィングレット

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