<旅客機>
川崎重工YPXを開発か 川崎重工は向こう10年ほどの間に100〜150席の旅客機YPXを開発する計画という。これは先週の米アビエーション・ウィーク誌と先月の英フライト・インターナショナル誌が書いているもので、先に開発が決まった三菱MRJと相まって、日本の航空工業界が旅客機とリージョナル機と両分野で本格的に動き出すということかもしれない。
旅客機としての大きさは、三菱MRJ(76〜92席)とぶつからず、ボーイングやエアバスが構想中の次世代旅客機(150席以上)との競合も避けられる隙間をねらったもの。ただしボンバーディア社が開発中のCシリーズとはぶつかることになる。
運航費は現用737-700よりも15%ほど低い。もっとも15%程度の経済効率では不充分で、これから出てくる旅客機は現用機にくらべて少なくとも3割以上の費用削減を実現すべきだという声も強い。
計画の推進にあたって、川崎は日本航空機開発協会(JADC)の協力を得たい考えで、具体化すれば富士重工や三菱重工の参加もあり得る。一方、東京都の石原知事はかねて日本がリーダーシップを取りつつ、アジア諸国が共同で航空機の開発をしようという構想を提唱していたことから、2つの考えが一緒になる可能性もある。そのときは台湾の航空工業開発センター(AIDC)も参加することになろう。
YPXの技術面に関しては、川崎が開発中の自衛隊向けXP-1やC-Xが基本になる。おそらくはXP-1と同じ胴体直径で、ウィングボックスや尾翼が同じものになる可能性が大きい。
とすればYPXの構造は10〜15%がXP-1やC-Xと共通になろうが、日本の各メーカーがボーイング787の複合材の胴体や主翼の製造にかかわっていることから、YPXも複合材ということになれば自衛隊機との共通性は少なくなる。
いずれにせよ、機体構造には新しい技術が採り入れられるはずで、今のボンバーディアやエンブラエル機よりは、1席あたりの重量が軽くなる。
エンジンは三菱MRJと同様、ギアード・ターボファンになる可能性が大きく、プラット・アンド・ホイットニーPW1000Gが最有力候補にあがっている。
設計の目安としては、キャビン客席が左右5列。座席数は、標準型YPXー11が113席だが、それより小さいYPX-10(93席)や大きいYPX-12(137席)が考えられている。
航続距離は、いずれも4,260km。これを5,930kmまで伸ばすこともできるという。最大離陸重量は最も大きなYPX-12が56.9トン。エンジン出力は推力9.2トンが2基。
川崎重工は、こうしたYPXについて、コンピューターと風洞実験による開発研究を進めており、キャビン・モックアップも製作している。
さらにエアラインに対して提案もしており、ルフトハンザ航空やSASからは、3〜4割のコスト削減の希望が出ている。また機体重量を軽くすることを求めるエアラインもある。
開発費は1,588億円と想定されている。開発が決まれば、その3分の1を政府が無利子の融資をすることになろう。1機あたりの価格は32億円程度になる模様。
なんだか、いやに具体的なことが書いてあるが、先行きどうなるのか。開発の着手から実用化までには7年を要するというが、その開発着手がいつになるか。今すぐ着手すれば2015年頃には実現するのかもしれぬが、まずは10年ほど先であろう。
ここまで具体的な考えがあるとすれば、この際、日本的な優柔不断はかなぐり捨てて、決断して貰いたいものである。
2007年9月27日に初飛行したXP-1(西川 渉、2008.8.25)
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