<ボーイング>

747-8F型式証明取得

 ボーイング747-8は去る8月18日、FAAの型式証明を取得した。同時にヨーロッパ航空安全当局の型式証明も認められた。量産1号機は9月初め、ルクセンブルクのカーゴラクス貨物航空へ引渡される。

 747-8は2005年秋に開発が始まったが、型式証明の取得は当初の計画より2年遅れとなった。途中で設計変更があったり、空力的な問題による機体の振動がなかなか除去できなかったためである。

 もともとは現用747-400の胴体を単に5.6m引き延ばし、全長76.3mとするだけの計画であった。ところが新しいエンジンに換装したため、主翼にも変更を加えなければ所期の性能が発揮できないことが判明した。そこで主翼の設計をやり直し、翼幅(スパン)を4m伸ばして68.5mとした。

 すると尾部の釣合いを取るための設計変更も必要となり、最終的には胴体の強度を上げる必要も生じて、開発作業に時間がかかることになった。

 その一方で、平行して開発中だった787にも問題や遅れが生じており、設計技師たちは多忙をきわめた。

 しかも2010年2月に試験飛行を開始すると、さらに問題が見つかって再設計の必要が生じた。というのは、主翼後縁の着陸フラップを下げたときに、フラップ周辺の空気の流れに乱れが生じ、振動が起こるのだ。この問題をなんとか解決したあとも、飛行中の風や空気流の加減によって振動が発生、だんだん激しくなって、危険な状態にまでなるという現象が見られた。このため主翼先端の再設計が必要になった。

 さらに小さな振動が残ったため、電子的な防振システムが装着された。FAAの試験飛行では、このシステムのスィッチを切っても振動が激しくなりすぎないことを実証しなければならなかった。

 こうしたことから、747-8の開発には思いがけず費用がかさみ、この6年間におよそ40億ドル(約3,500億円)を費やしたものと見られる。

 しかし、同機を操縦するパイロットは、現用747-400の操縦経験があれば、3日間の座学だけで、シミュレーター訓練の必要もなく、そのまま747-8に搭乗することができる。

 最近までの受注数は78機。ほかに目下開発中の747-8iインターコンチネンタル旅客機が36機の注文を受けている。これも今年中に型式証明を取って、1号機はクェート政府の要人特別機として引渡される予定。

 ボーイング社は、これら2種類の747-8を来年5月までに月産2機とする計画である。

(西川 渉、2011.8.22)

 

【関連頁】

   ボーイング747-8F試験飛行終了(2011.8.16)

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