<A対B>

巻き返すボーイング

 

 エアバスとボーイングの競争が激しさを増している。エアバス社の新しい超巨人機A380が4月27日に初飛行したことはご承知のとおりだが、これにタイミングを合わせるように、ボーイング社が次々と787の受注を発表した。

 最も新しい発表は米ノースウェスト航空(NWA)が787を確定18機、仮50機発注したというもの。NWAは現在、A330-200とA330-300を合わせて15機保有し、さらに17機を注文している。ほかにもA320とA319を合わせて150機運航しており、エアバス社にとっては米エアラインの中で最大の顧客だった。そのため将来の中型長距離機もA350が最有力候補と見られていた。その立場を787に奪われ、見放されたような格好になって、エアバス社の受けた衝撃も大きい。

 NWAの発注した787は長距離用の787-8。ビジネスクラス36席、エコノミークラス185席で、15,700kmの航続性能を持ち、長距離線で高い効率を発揮する。というのも現用747-200やDC-10-30にくらべて燃料効率が5割増しで、運航費や整備費の削減が期待されるからである。

 引渡し開始は2008年8月。NWAは北米のエアラインとしては最も早く787の定期運航を開始、まずは2008年夏の北京オリンピック便が最初の就航日程となっている。


ノースウェスト航空の787想像図

 これより先、ボーイング787はA380初飛行の2日前、エアカナダから確定14機、仮46機を受注、1日前の26日にはエアインディアから確定20機、仮7機、そして大韓航空からも10機の注文が明らかにされた。

 エアカナダは、A350についても検討した。そのうえで787を選定したのは、燃料効率が良く、複合材などの新しく画期的な技術が採用されているためとしている。

 

 ボーイング社によれば、787ドリームライナーはエアライン、旅客、投資家、環境などの要件を考慮しながら設計されている。現用の同級機にくらべて燃料消費は20%減、貨物搭載量は45%増となり、乗客に対しては機内の湿度が上がり、座席と通路の幅が広がり、窓が大きくなるなど、快適性が向上する。

 客席数は250席前後で、最大289席。航続6,500〜16,000kmで、速度はマッハ0.85と、現用旅客機の中では最も速い。

 製作は2006年からはじまり、初飛行は2007年、型式証明の取得と路線就航は2008年の予定。

 787の受注数は、最近の一連の注文で255機となった。発注しているのはエアライン20社だが 2010年までの引渡し計画が埋まってしまった。

 そのうえ受注数は今後なお増加の見こみで、たとえばカタール航空なども近く787-8を10機発注するもようだし、未公表の受注見こみがすでに35機ほどあると伝えられる。これが具体化すれば、受注数は290機まで伸びることとなる。

 しかし、ボーイング787の受注増について、エアバス社によると、カタログ価格を大きく下回るような格安価格を出しているためという。エアバス社もエアカナダやNWAに対しては、思い切った見積もり価格を提案していたらしい。それでも787にさらわれたのは、よほど安い価格だったに違いないというのである。

 この調子でゆけば、今年末までの受注競争は、機数においてはボーイング機の方がエアバス機を上回る可能性が高い。これは下表に示すように、2000年以来5年ぶりのことである。

エアバス機とボーイング機の受注数

エアバス

ボーイング

1999

379

368

2000

441

602

2001

418

314

2002

348

250

2003

331

250

2004

447

277

 ところで、A380の方は就航がやや遅れるかもしれないという報道がある。これまでは最初の定期運航がシンガポール航空で来年6月からとされていたが、最近のエアバス社の表現は「就航は来年後半」と微妙に変化している。

 

【関連頁】

   A380初飛行の詳報(2005.5.2)

   A380が初飛行(2005.4.28)

(西川 渉、2005.5.12)

 

(表紙へ戻る)