<ボーイング787>

年内の飛行は無理か


787の影がだんだん遠ざかってゆく

 ボーイング787は7月7日から走行試験を始めたが、初飛行の日程はまだ決まっていない。主翼取りつけ部の強度補修をどのように実施するか、その方法も未定。

 というのも強度不足の問題が、予想以上に複雑であることが判明したためで、この分では初飛行は年内は無理かもしれないと見られるに至った。

 それというのも、まず主翼と胴体の接合部を再設計する必要があるかもしれない。そのうえで飛行試験に使う機体を補修する前に、先ず地上試験機の補修をして強度試験にかけ、結果を確認したうえで飛行試験機を補修する必要があるのではないかという考えが出てきた。

 とすれば、地上試験機の補修と確認試験だけで1〜2ヵ月を要する。その後で飛行試験機を補修し、飛行までの確認試験をおこなうのに再び2ヵ月ほどかかる。さらに、いったん完成した機体に新しい部品を組みこむのは極めて困難という意見もあって、年内の飛行は難しいというのである。

 当初、6月23日に初飛行の延期を決めたとき、ボーイングの説明は少数の部品を改修するだけだから、作業は簡単ということだった。しかし、問題を探ってゆくうちに意外に難しいことが分かってきたのである。

 第一に上記のような問題があるが、補修の方法と設計が完成しても、次は主翼取りつけ部の内部に作業員がもぐりこんで、狭いところで細かい作業をしなければならない。それもチタニウムや複合材に微妙な穴をあけたりするわけだが、これらの材料に穴をあけるだけでも容易ではない。

 もとより作業をする前には、主翼の中から完全に燃料を抜かなければならない。これまた厄介な仕事である。

 設計上の問題点と改修作業案の概要は、今のところ下図に見る通りである。


(シアトル・タイムズ、2009年7月22日)

【関連頁】

   ボーイング787走行試験開始(2009.7.20)

(西川 渉、2009.7.23)

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