<アメリカン航空>

史上最大規模の旅客機発注

 アメリカン航空は、かねて機材の大量入れ替えを計画したきたが、このほどエアバスおよびボーイングの両社に対し、合わせて460機という大量の旅客機を発注することにした。これはエアライン史上最大規模の発注で、ほかに465機の仮発注も予定されているらしい。

 内訳はエアバス機が260機、ボーイング機が200機。このうちエアバス機はA320neoが130機、従来型のA320が130機。ボーイング機は737NGが100機、将来の737エンジン換装型が100機となっている。また仮発注465機の内訳は、新しい737が100機、A320neoが365機。

 これらの機材は2013年から受領開始、2022年までに確定発注の全機を受け取り、仮発注分は2025年までに受領する計画。このうちA320neoは2017年から受領開始の予定である。

 エアバス社は過去20年間、アメリカン航空の注文が取れなかった。したがって同社にとって大きな突破口が開けたことになる。一方、ボーイング社にとっては今回、うかうかするとアメリカン航空の大量発注をエアバス社に全機もっていかれるおそれもあった。それを半分余りで食い止め、安堵の吐息をついたところといえよう。

 同時にボーイング社は、A320neoに対抗する737の後継機をエンジン換装だけにするか、全く新たな機材を開発するか決めかねていたが、これでエンジン換装だけで済ますことになった。

 いずれにせよ、この2大航空機メーカーを競わせ、おそらくは大幅値引きや多額の融資を獲得したアメリカン航空は、双方の面目をつぶすことなく漁夫の利を得たことになる。まことにうまい駆け引きであった。

 これで、アメリカン航空は旧くなったMD-80や757を入れ替え、燃料費を削減すると共に、静かで快適な乗り心地を乗客に提供するとしている。実際、アメリカン航空はこれまで騒々しい旧型機を飛ばす旧弊企業という印象があった。現有600機以上の機材は平均年齢が15年に達し、この第2四半期も2億8600万ドルの赤字を出している。

 こうした体質から脱却して、5年後には保有機の3分の1を新しい機材に改め、若々しくはつらつとした印象を旅客に与えることが今回の大量発注の狙いでもある。

 ダラス・フォトワース空港を本拠とするアメリカン航空にとって、当面の競争相手は格安運賃を標榜するサウスウェスト航空やジェットブルーだが、新しい機材によってどこまで対抗してゆけるか。「ピカピカの機材をもってきても、成功するとは限らない」と評するむきもある。

 

 余談ながら、格安航空の最近の急進撃は大変なものがあり、その影響はようやく日本にも及びはじめた。香港との合弁によるピーチ航空の事業許可を取得したばかりの全日空は昨21日、今度はマレーシアのエアアジアと組んでエアアジア・ジャパンを設立すると発表した。

 なお、日本に乗り入れている格安航空は韓国のチェジュ航空、エアプサン、ジンエア、イースター航空、シンガポールのジェットスター・アジア航空、マレーシアのエアアジアX、フィリピンのセブ・パシフィック、豪州のジェットスター、中国の春秋航空と、合わせて9社に上る。

(西川 渉、2011.7.22)

【関連頁】
   取り残される日本(2011.7.13)

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