NASAアポロ計画の謎

 

 
空気のないはずの月面で風になびく星条旗。
果たしてここは月面か。それともアリゾナの砂漠(?)。
 

 

 人類は果たして月に行ったのか。アポロ宇宙船は本当に月面着陸に成功したのだろうか。どうもあやしいところがある……。そんな疑念を書いた興味深い文書が山野さんから転送されてきた。差出し人はオーストラリアの人らしい。アポロ11号を初めとするアメリカの月着陸はでっち上げという陰謀説をとなえる本の紹介である。

 空気のないはずの月面で、なぜ星条旗が風にはためいているのか――月面着陸の写真を見ていて小さな疑問をもったラルフ・リーンという技術者がNASAの発表した写真、映像フィルム、報告書類を精査し、人類はまだ月に行っていないという結論に達した。それが「NASA Mooned America」(NASAアメリカをたぶらかす)という本である。

 アメリカがこのような陰謀をたくらんだきっかけは何か。言うまでもなく、当時のソ連に遅れを取るまいとするあせりであった。ケネディ大統領は人類を月に送りこむと宣言して、400億ドルという莫大な予算を、このプロジェクトに割り当てた。その結果、1969年から72年にかけて7基のアポロ宇宙船が月に向かい、6基が成功したということになったのである。

 失敗とされたのはアポロ13号で、途中で酸素のタンクが破れて月には行けなかったというストーリーだが、その他の宇宙船も月に着陸したという証拠はない。月の石と称するようなものは実験室で簡単に製作できるし、あとの証拠は写真と映像フィルムにすぎない。そんなものは証拠にならないどころか、至るところで化けの皮がはがれていると著者はいう。

 初めての月面着陸と称する「人類の最も偉大な成果」のテレビ画面でも、ほこりや岩の向こうにぼんやりした白い幽霊のような人物が2人うごめいているだけ。何故はっきりと見えないのか。NASAは直接リンクされていなかったからと言うだけで、誰も確かめることはできない。

 その一方で、静止画像は鮮明である。宇宙飛行士は数千枚の写真を撮り、その全てが完璧な露出で1枚のブレや失敗もなく、きれいに現像されている。摩訶不思議というほかはない。

 そればかりではない。次のような疑問はどう解釈すればいいのか。たとえばカメラのフィルムは月へ到着するまでに、途中の強力な宇宙線によって駄目になってしまうのではないか。また宇宙飛行士たちは、月面で宇宙服を着たままカメラを調節したり、フィルムを入れ替えたり、フィルターを交換したりしたようだが、指を使わずにどうやってそんな細かい作業ができたのか。

 デビッド・パーシーというイギリス人の写真家は、これらの月面写真は偽物と断言する。たとえば月面に映っている影から見て複数の光源――何か強力なスポットライトで照らされているように見えるが、月の上の光源は太陽だけではないのか。とりわけアメリカの国旗(星条旗)と「米国」という文字には、どの写真を見ても、周囲が暗いときでも常に明るい光が当っている。

 また、同じ場所で同じときに撮ったとNASAが主張するスチール写真と映像フィルムの場面が合致しない。 

 


月の上の光源は太陽だけのはず。にもかかわらず宇宙飛行士の影が2方向に分かれている。

 

 疑問はもっとある。バンアレン帯の外側は太陽面から立ち昇る巨大なフレア(火炎)などから発した死の放射能が満ちている。そのバンアレン帯を超えて月まで24万マイルも飛んで行く間に、太陽では少なくとも1,485回の彩層爆発によるフレアが生じたはずだ。この放射能を防御するには厚さ2m以上のシールドが必要だが、そんなものは月面着陸船にもついていなかった。

 宇宙飛行士の着ている宇宙服も、それほど強力な防護が可能ならば、何故ソ連のチェルノブイリ原発事故のときに利用しなかったのか。宇宙飛行士が浴びた宇宙の放射能にくらべれば、原発の放射能など微々たる量に過ぎないはず。

 おまけにチェルノブイリでは多数の人が死んだり、病気になったりしている。にもかかわらず宇宙飛行士がガンになったという話は聞いたことがない。たとえばアポロ16号が飛んだのは巨大なフレアがはじまったときで、「宇宙船の中の人間はみんな黒焦げになって死んでもおかしくなかった」とリーンは言う。

 実は、初めて月に到達したとされるアポロ11号が出発するまでに、11人の宇宙飛行士が死んでいる。うち3人の死因はせまい宇宙船の中で酸素が爆発したため、7人は飛行機事故、1人は自動車事故である。この事故率は非常に高い。NASAの陰謀を隠す口封じのために、事故に見せかけて殺されたのではないのか。しかしNASAは、そういう疑問をぶつけても答えようとしない。単に月着陸はおこなわれたし、写真は本物だと繰り返すばかりである。

 アポロ計画で唯一の真実はロケットの打ち上げである。死ぬべき3人はそこに乗ったままだったが、あとの宇宙飛行士はいったん乗りこんで1日くらい経ってから、ロケット発射の前にひそかに降りてしまうのだ。そして1週間ほどどこかに隠れていて、宇宙船が戻ってきたとき、それを洋上で回収したヘリコプターから手を振りながら降りてくればいい。

 疑問は尽きない。たとえばアポロ14号のアレン・シェパードが月面でゴルフをやってみせる。そのとき彼の打ったボールが右へスライスしてゆく。地上のミッション・コントロールのスタッフがそれをからかっているが、スライスというのはボールの表面を流れる空気流が均等でないときに起こるのではないのか。

 また、アポロ16号の月着陸船が月面から離昇してゆくとき、カメラがそれを追ってパンしてゆく。そのカメラを誰が操作していたのか。さらにアポロ11号のアームストロング船長が「人類の偉大な第1歩」を月面に印すとき、カメラは下から撮っていた。そのカメラマンは月面に横になっていなければならなかったはずだが、それは誰だったのか。

 月面に到着した当時、地球では冷戦状態にあった。とすれば誰でも考えそうなことだが、アメリカは何故、月面から地球へ、地球上どこからでも見えるような信号を送って国の威信を宣伝しなかったのか。たとえばマグネシウムの炎を上げるだけでもよかったではないか。

 アポロ12号から月面に降り立った飛行士は2人だけだった。その2人が月の上を歩き回っていたとき、1人のバイザーに映っていた飛行士はカメラをもっていなかった。いったい誰がその写真を撮ったのか。

 月面から撮った写真は、どれも背景の夜空に星が写っていない。八ッブル望遠鏡では星が見えるのに。

 そして最後に、月面に立てた星条旗は、なぜ風になびいていたのか。 


2人きりの月面でバイザーに映ったもう一人の宇宙飛行士はカメラをもっていない。
(では、この写真は誰が撮ったのか)

 

 最近、NASAは1兆ドルをかけて火星へ人間を送ると称する計画を進めている。今のコンピューター・グラフィック技術を使えば、火星のシーンなど簡単にできてしまう。再びわれわれはどれが本物か見分けがつかなくなり、だまされることになろう。

 以上が山野さんから転送されてきた月着陸の怪に関する書簡の要旨である。むろん私はアポロ計画が偽物とか欺瞞だと思っているわけではない。しかし指摘されてみると、いささか疑問がわいてくる。実際に自分でも確かめたいと思って、NASAのウェブサイトに行ってみた。長時間をかけて探し回り、いくつかの写真を集めてきたのがここに掲げる数枚だが、パソコン画面では虫メガネで見てもよく分からない。

 しかし、一種の知的ゲームとしては面白い。ウェブ上で調べていくと、この本の紹介をしたり、「誰も月には行っていない」といった同じような議論をしているサイトがいくつか見つかった。中には2時間ほどのビデオを売っているサイトもあり、そのさわりのところをインターネットで見ることもできる。

 ラルフ・リーンの原著には、どうやら鮮明な15枚の写真もあるらしく、よほど注文を出そうかと思ったが、それを読むにはこちらの時間がないと思ってあきらめた。価格は25ドルだそうである。

 一方、日本語のサイトでアポロ計画の疑問を論じたものは一つも見あたらなかった。それならばと思って、ここにご紹介するゆえんである。


旗の影はあるのに、人間の影がない。
(飛行機の中で、無重力状態で撮った写真をあとからはめこんだのではないのか)

 

(西川渉、2000.10.10)

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