<米陸軍>

ARH-70ヘリコプター取りやめか

 米陸軍がARH武装偵察ヘリコプターの調達計画を中止するかもしれないと伝えられる。ベル407を基本とする小型単発機に、そんな大きな問題があるとは思っていなかっただけに、このニュースには驚いた。

 この計画は昔のジェットレンジャーを基本とするOH-58Dの後継機で、2005年7月に368機の調達契約が正式に調印された。これによりベル社はモデル407のエンジンを強力なハニウェルHTS900に換装し、テールアセンブリーを427のものに付け換えてARH-70として開発、2006年7月20日に初飛行させた。

 ところが、試作4機で試験飛行をしていたところ、2007年春エンジンの不調で不時着して2ヵ月ほど飛行停止になった。そのため開発作業が遅れ、なかなか量産段階に入れないまま、2008年度の米国防予算では調達費がゼロ査定になっていたらしい。

 今回の計画中止になるかもしれないという理由は、コストの大幅上昇である。当初は1機あたり860万ドル(約9億円)の予定だったが、これが1,200万ドル(約13億円)以上と4割増しになるというのである。

 なぜコストが上がるのか明らかではないが、国防省の調達規則には当初の価格が25%以上に上昇するときは、次の4つの条件について再検討し、計画続行が妥当であることが確認されなければならないという。

 ひとつはアメリカの国防上きわめて重要であること。第2は有効な代替手段がないこと。第3はコスト上昇の内容が合理的であること。第4にこれ以上コストが上昇しないことが確認できることである。

 したがってベルARHがこうした条件に適合しなければ、計画は中止され、再入札になるかもしれない。そうすると、3年前に負けたボーイング社の提案が復活し、MH-6Mが登場してくるかもしれない。同機は、実質的にはMDヘリコプター社が民間向けに生産中の小型単発機で、MDヘリコプターの再建を進めているリン・ティルトン女史にとっては思いがけず大変な朗報、かつ絶好のチャンスになるのではないか。

 3年前の競争入札の際は会社再建にかかったばかりで、まだ陸軍向けの大量生産は無理というのでしりぞけられた。そのときの歯ぎしりが今ようやく報われるかもしれないのだ。

 もしそうなれば、MDヘリコプター社の再建は一挙に進み、ティルトン女史は名実共に成功者となるであろう。今後のなりゆきが注目される。

【関連頁】

 ベルARHを採用(2005.6.1)

(西川 渉、2008.7.11)

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