<欺瞞と捏造の新聞>

朝日よ、さらば

 

 朝日新聞の定期購読を始めてから半世紀を超える。結婚前の親の代からすればもっと長く読んできた。しかし数年前から、この新聞の胡散臭さがひどくなってきた。中国や朝鮮に肩入れしたような偏向記事がますます増えてきたからである。

 そして、ついに化けの皮がはがれたのが去る8月5日のこと。1面左肩に7段抜きで「慰安婦問題の本質直視を」(編集担当杉浦伸之)なる大げさで意味不明の記事が出ているかと思ったら、中の16〜17面に「慰安婦問題どう伝えたか」「読者の疑問に答えます」という大きな見出しが両面見開きで横に並んでいる。

 内容は大きく7部に分かれ「慰安婦問題とは」「自由を奪われた強制性あった」「裏付け得られず虚偽と判断」「本誌報道前に政府も存在把握」「当時は研究が乏しく同一視」「記事に事実のねじ曲げない」「他紙の報道は」といった見出しで、あたかも他人事(ひとごと)を解説するかのような筆致。

 自らの罪状を認め、それを詫びる文字がないどころか、一種の居直りが感じられる。しかも、ほとんど文字だけの紙面が広がっていて、こんなものを誰が読みたいと思うだろうか。そこがまた朝日の狙いだったにちがいない。

 さらに、この居直り記事の後日、朝日は、同紙が5月20日付の1面トップで「所長命令に違反 原発撤退」「福島第1所員の9割」と報じた記事が単なる誤報や「吉田調書」の読み違えではなく、意図的な捏造であるとして非難を浴びた。

 筆者も昨秋、東京電力の福島原発を見学し、『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日』(門田隆将、PHP研究所、2012年12月4日刊)を読んで、吉田所長はもとより現場の所員たちが決死の覚悟で危険な事後処理にあたった様子を知っていたので、「違反、撤退」の見出しに驚き、「おや?」と思った。何か所員たちが放射能の危険におびえて責務を放り出し、いっせいに逃げ出したかのような悪意に満ちた書き方だったからである。

 そして9月に入ると、池上彰の連載記事を掲載拒否した問題が明るみに出た。この記事は「慰安婦報道検証/訂正、遅きに失したのでは」と題して、朝日にいっそうの反省をうながしたもの。天下の大新聞が自ら言論の自由を封じた恰好になり、これも非難のマトになった。

 これらについては、すでに多くの識者たちが新聞、雑誌、テレビなどで論じているので、これ以上くり返すつもりはない。そこで、この機会に『米国・支那・韓国・朝日を斬る』(高山正之、テーミス、2013年12月10日刊)を読み直してみたい。

 まず、朝日にはタブーが多すぎると著者はいう、<例えば支那の機嫌を損ねる話はだめ。韓国、北朝鮮の批判もダメ。……ただ日本と自民党だけは埓外で、好きに嫌がらせを書いていい。だから在日を除いて普通の日本人は読んでいやな気分にしかならない>

 まったくその通りで、「いやな気分」どころか、気持ちを萎えさせるのである。なぜそうまでして、日本人を骨抜きにしようとするのか。

<国益などはどうでもいい。「暴力装置を持つ権力を倒すのが新聞の努め」(朝日新聞前主筆、船橋洋一)みたいな馬鹿がどうしても出てくる>からである。

 その馬鹿な記者から権力者とみなされた<総務長官の江藤隆美が「日韓併合は強制じゃあない。村山発言は間違っている」「日本は朝鮮にいいことをした」という今では問題にもならない事実を記者懇で語った。平成7年のことだ。それを出席していたあの新聞の記者が韓国の新聞社に漏らし、騒動にして江藤を辞任に追い込んだ>

<編集委員の竹内敬二は、原子炉は日本製でガス抜き弁はなかったが「海外の流れに押されて弁をつけた」と書く。あれは米国製GE社製でスリーマイル島事故のあと東電が自主的に装備した。おかげで最悪の事態は避けられたのに新聞は事実などクソ喰らえ、日本を貶(おとし)めればそれでいいという意図が丸見えだ>

<70年代、首都圏でOL10人を強姦して殺した容疑で小野悦男が起訴されたとき、……朝日は小野悦男が代用監獄で偽りの自白を強いられた、冤罪だと紙面で騒ぎ続けた。……日弁連と朝日がそういうならと東京高裁の竪山真一判事は小野を無罪にした。出所した小野はさらに2人の女性を手にかけ、殺人罪で捕まった。でも朝日には小野の人権が守られたのだから、一般人が殺されようとそんなことはどうでもよかった>

<こんな新聞に広告を出す企業があって、天声人語を書き写して喜ぶ日本人がいる限り、日本に明日はない>。全くその通りで、この新聞の広告の多いのにはうんざりする。たとえば昨日は衣服、葬儀社、通信販売、旅行、カラオケ装置、酒類、音楽CD、セミナー、寝具、強精薬など、40頁のうち12頁(30%)が全面広告だった。読者は、金を払って広告を買わされているようなものだ。

 もう一度慰安婦問題に戻ると、これは朝日が自分でいうような研究不足による「誤報」なんぞではない。詐報でなければ欺報である。意図的な捏造であり、このような捏造報道は過去、伊藤律架空会見事件やサンゴ事件にも見られる。

 高山正之も<従軍慰安婦の嘘は朝日新聞の植村隆が創作した。それをもとに植村の韓国人妻の母が慰安婦の像を世界中に建てようと騒ぎ、手始めに米国に建てた。新聞は抗議するでなし……朝鮮人のいい分をたくさん紙面に載せる。国益にもとる嘘など新聞に載せる義務はない>と書く。

 朝日新聞はしばしば「ヘイト・スピーチ」なる問題を取り上げる。それならば慰安婦問題こそは日本憎しのヘイト・スピーチにほかならない。それも街宣車と異なり、世界中に聞こえるほどの巨大スピーカーによる国際宣伝である。

 これによって、日本が如何に非道で冷酷で残虐で恥知らずの、悪魔のような国であるかを30年余の長きにわたって騒ぎ立て宣伝してきた。日本という国家と国民に恥辱まみれの傷を負わせたばかりでなく、国際的な政治問題まで惹き起してきたのである。

<騒ぎの原点は91年に朝日がソウル特派員植村隆の名で「従軍慰安婦」の嘘を掲載したことではなかったのか。それをさらに92年に中大の吉見義明が「軍関与があった」という嘘記事で塗り固めて、朝日が意図的に政治問題化させていったのではなかったのか。まるで自分は関与していない、慰安婦問題は自然発生したように書く>

 著者がそう書いたのは1年ほど前。まさに8月5日の居直り記事を予見していたかのごとくである。

 こうなれば欺瞞と捏造の朝日新聞は廃刊にすべきだろう。さもなくば、こちらからおさらばして、半世紀余の購読を打ち切るほかはない。

(西川 渉、2014.9.21)

 

    

表紙へ戻る