<両雄対決>

エアバス対ボーイング

 

 昨日の本頁に掲載した「エアバス対ボーイング」の派遣争いは、月刊誌『航空情報』のために、6月下旬パリ航空ショーの直後に書いたものである。その後1か月余りのニュースを見ていると、両社の競争に関する話題がいくつか出てきた。昨日の本頁を補足する意味で要点を掲載する。

 念のために、ここにボーイングの負けた話が書いてあるからといって、筆者自身エアバスを贔屓するとか、ボーイングが好かぬとか、そういう気持は全くないのでお断りしておきます。

 要点の一つ、英『フライト・インターナショナル』誌の集計によれば、エアバス社の今年上半期の新製機引渡し数が史上初めてボーイング社を上回った。ボーイングの145機に対し、エアバスは149機である。この半年間のエアバス社の生産数は昨年同期を25%ほど下回ったが、ボーイング社の方は3割以上の減少となったため、エアバスの方が多くなったというもの。

 これにより、今年1年間の生産数は計画通りの303機になる見こみ。ボーイング社の方は280機の生産計画だから、両社予定通りならば年間でもエアバスの方がボーイングを上回る。そうなればエアバス社は1974年の引渡し開始以来初めて、ボーイング社を制して旅客機メーカーの頂点に立つこととなる。

 なお両社の、この半年間の得点表は次の通りである。


(単位:機数)

 こうした状況から、ボーイング社は今年第2四半期の3か月間に1億9,200万ドルの赤字を計上したと英『エコノミスト』誌が報じている。のみならず同社は2001年9月、シアトルからシカゴに本社を移して以来、良くないことばかり続いているというのである。

 『エコノミスト』はイギリスの雑誌で、アメリカのことは余りよく書かない。とりわけボーイングは欧州多国間企業のエアバス社の競争相手でもあって、今週号は悪いことばかり並べ立てている。

 それによると、シカゴへの移転からこっち、ボーイングは架空のジェット旅客機開発計画2件をでっち上げ、それを反故にした。ソニック・クルーザーと改良型747である。また株主訴訟を受けて9,000万ドルの支出を余儀なくされ、一方では欧州エアバス社に次々と新しい受注契約をさらわれてしまった。

 そして先週は民間機の製造に従事する従業員5,000人を解雇するはめにおちいり、過去2年間の人員削減はついに40%に達した。民間機の引渡し数も1年前にくらべて3分の1ほど減少し、利益は44%減となった。

 宇宙ビジネスも1990年代なかばから50億ドルを注ぎ込んできた。これはブロードバンドの普及に伴って、人工衛星や打ち上げロケットの需要が増えると見たためだが、その需要はブームになる前に終わってしまった。ボーイングでは今や、衛星ビジネスも縮小の方向にある。

 その一方で、ライバルのエアバス社は着々とA380の開発を進めている。今年上半期の受注数もエアバス社の方がボーイングより4割ほど多く、引渡し数も史上初めてエアバス社が上回った。

 さらに軍用機の分野でも、エアバス社は欧州7か国との間で新しい軍用輸送機A400Mの契約が成立した。ボーイング社の牙城が次々と崩されていくかのようである。


ボーイング717

 しかし再び英『フライト・インターナショナル』誌に戻ると、ボーイング社は将来に向かって巻き返しをはかるべく、現用機の新たな改良計画を次々と打ち出している。

 ひとつは717のストレッチ型717-300X。標準型717-200の106席に対して128席とするもので、航続3,000km。基本データは下表の通りである。

 また747のストレッチ型も研究中。7E7の技術を利用する新世代の747で、2009年には就航可能という。特に7E7のエンジン利用が改良の中心で、騒音や燃費が少なく、巡航速度がマッハ0.86まで増加、運航費も安くなるという。

 胴体も長くなって、3クラスの標準座席数が448席。主翼スパンは約4m伸びて68.7mになる。

 これを貨物機とする場合は、胴体がさらに長くなり、最大離陸重量は435トンで、747の中では現在最も重い747-400ERFよりも22トンほど重くなる。ペイロードは最大132トン。

 新しい747発達型の基本データは下表の通りである。


ロサンゼルス国際空港 

(西川 渉、2003.8.5) 

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