ビジネス・ヘリコプターの増加

 

 この10月10日から12日まで、米ニューオルリンズではビジネス航空協会(NBAA)の年次大会が開かれる。それに関連して『ローター・アンド・ウィング』誌2000年10月号が、米国ではビジネス・ヘリコプターが増えてきたと報じている。

 それによると1995年から99年までの間に、企業の経営トップをのせる要人輸送用ヘリコプターは、機数が3倍に増加したという。ほかの用途はいずれも横ばいというのに、独りビジネス用途だけが伸びているらしい。

 これは最近のアメリカで定期便の遅れが多くなり、高速道路も混雑がひどくなって、多忙をきわめる経営者の効率的な移動が難しくなってきた。ヘリコプターは、そうした混雑を避ける手段となっているためである。

 現在アメリカでは、およそ6,000社が9,000機のタービン・ヘリコプターを飛ばしている。このうち13%は「フォーチュン500」――すなわちアメリカのトップ企業500社が使っている。

 またアグスタウェストランド社の調査結果では、ヘリコプターを利用することによって経営者の仕事の能率が上がるが、その上がり方はヘリコプターを使っていない人にくらべて8.4倍にもなるという。ちなみに定期便を使う人は1.4倍、自動車を使えば2.5倍になるとか。

 日本でも、ヘリコプターがビジネスの道具として使われていないわけではない。とりわけ1980年代後半からの経済高揚期には一般企業も多数のヘリコプターを購入した。その結果、1991年4月5日ヘリコプターの登録機数が固定翼数を抜いてしまった。この日2機のAS350が運輸省に登録されて1,156機となった。それまで飛行機と同じ1,154機に並んでいたが、ついに飛行機を抜いたわけである。

 そして同年末、民間ヘリコプターの登録機数は1,201機に達した。これが、わが民間ヘリコプターの最大機数である。おそらくは、その3分の1以上が一般企業の保有するビジネス機や自家用機だったと見られる。

 しかし、いわゆるバブルの崩壊とともに、多くの企業の経営内容も悪化し、ヘリコプターを持ちきれなくなったところ、あるいは持つ意味のなくなったところが増えて、400機程度が売却された。このあたりのことは、つい先頃本頁にも書いたばかりである。

 現在ビジネス・ヘリコプターを効率よく活用している企業はごくわずかだが、いずれ景気の回復とともに、日本の地勢に合ったヘリコプターがビジネス機として増加することを期待したい。

 なお2000年6月末現在の民間機登録機数は、次表の通りである。

機  数

構成比

飛行機

1,227機

56.2%

ヘリコプター

958機

43.8%

合計

2,185機

100.0%

[出所]運輸省、2000年6月末。ほかに滑空機が614機、飛行船が1機登録されている。

 

 (西川渉、2000.10.8)

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