<小言航兵衛>

戦争屋と政治屋

 

 ボストン・テレビの記者とブッシュとの一問一答。

ヒラー「チェチェンの大統領の名前を言えますか?」
ブッシュ「いや。君は言えるのかい?」
ヒラー「台湾の総統の名前は?」
ブッシュ「ああ、リーだ」

ヒラー「パキスタンを統治している将軍の名前は?」
ブッシュ「ちょっと待ってくれよ。これは、五十の質問かい」
ヒラー「いいえ、世界の四つの注目地域の四人の指導者についての四つの質問です」
ブッシュ「パキスタンの新しい将軍は、この前、選挙で選ばれたばかりだ。いや、選挙はしていないが、政権を握ったんだ。彼はパキスタンに安定をもたらすだろう。南アジアにとって朗報だと思う」
ヒラー「名前は?」
ブッシュ「将軍だ。名前は思い出せない。ともかく、将軍だ」

ヒラー「では、インドの首相の名前は?」
ブッシュ「インドの新しい首相の名前は……わからない。君は、メキシコの外務大臣の名前を言えるのか?」
ヒラー「いいえ、知りません、閣下。ですが、私は大統領をめざしているわけではありませんから」
ブッシュ「いや、私が言いたいのは、メキシコの外相の名前が言えないようじゃ、君も仕事が務まらないんじゃないかということだ。でも実際には、メキシコの外相の名前を知っていようといまいと、君は記者の仕事ができている」

 これは「山と太陽のホームページ」に出てくるような小話や冗談ではない。1999年秋、大統領選挙への立候補を表明したジョージ・ブッシュがテレビに生出演したときの実際の場面である。

 先日読んだ『ブッシュの戦争株式会社』(W.D.ハートゥング著、阪急コミュニケーションズ社、2004年3月6日刊)の中に引用されたやりとりだが、この問答はブッシュの無知といい加減さが当時も評判になり、こんな男が大統領になったら大変だと誰もが思った。

 ところが2000年秋のインチキ選挙で、そのデタラメ・ブッシュが当選してしまったのである。その結果、最近までの3年余りの間に世界中を大混乱におとしいれたことは、われわれが身をもって体験しているとおり。アフガニスタンやイラクへの攻撃は9.11テロへの報復だというが、9.11自体がブッシュのデタラメ政策への報復ではなかったのか。

 そのデタラメぶりは世界中に波及し、イラクのみならず、サウジ、ロシア、スペイン、タイなど思いがけない国々で大規模なテロが発生するようになった。やがて、日本も例外ではなくなるのだろう。世の中これだけ騒がしくなると、誰でも落ち着きがなくなり、テロばかりでなく、政治や経済までどうでもいいような投げやりの気分になってくる。最近のイラク人質に対する政治家どもの物言いや、年金法の強引な改正などにも、それがよく現れている。

 年金を納めないのは脱税に近い犯罪だそうだが、その犯罪者が誰も逮捕されないのはどういうわけか。脱税で逮捕されるのはアル・カポネに限ったことではない。日本にだって、実例は無数にあるはずで、永田町の暗黒街に巣くう政治屋どもを一掃する好機ではないのか。

 この本の原著は「How much are you making on the war, Daddy?」(親父さん、戦争でいくらもうかった?)という題名である。そして、親父さんにあたる政治屋や企業の名前がたくさん出てくる。

(小言航兵衛、2004.5.2)

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