破廉恥罪で強制収容

 1年前に「ウィンドウズ95」を使うようになって、いつもイヤな気分にさせられるのは、しばしば画面に出てくる次のような表示である。



 何のことだか全く意味不明で、もとより製造元へ連絡したことなどないけれども、とにかく「ジャン!」という恐ろしい音とともに現れるから、思わずどきっとさせられる。しかも「不正」と書いてある。不正とは何事か。その意味するところ、日本語では単に字面で見るような「正しくないこと」の意味だけではなく、道義に外れた行為や違法な犯罪といったニュアンスが含まれる。したがって「不正を働く」といえば、厚生省次官や大蔵省高官のように、一種の破廉恥罪を犯すことである。

 そういう輩(やから)とは一緒にされたくないと思うが、コンピューターの操作をしていて、こちらがどういう違法行為を犯したというのか。「今のお前の操作は大変な違反だぞ」といわれているような気がして、まことに不愉快である。しかも、目を凝らしてよく見ないと「強制収容だ」といわれているみたいで、何だかとんでもない破廉恥罪で牢屋にでも入れられのかと思わされる。いかに優秀なコンピューター・プログラマーといえども、そこまで居丈高になることはなかろう。

 基本となった英語版のソフトでどんな言葉が使ってあったのかは知らぬが、おそらく日本語を知らぬものの無神経な翻訳であろう。ここは単に「ただいまの操作は誤りでした」とか「ただいま操作ミスがありました」とか、どうしても短い表現にしたいのならば「誤操作です。プログラムを終了してください」というくらいにしたらどうか。 

 この表示は出現のたびに心臓が鳴り、血圧が上がり、寿命が削られる。パソコン・メーカーとしては、ハード・メーカーであろうとソフト・メーカーであろうと、パソコン利用者の命を縮めるのではなく、少しでも生き長らえさせてパソコンを使わせ、製品を買わせるような、そういう戦略を立てるべきであろう。

 あの「不正な」表現は、今すぐ直して貰いたい。

(西川 渉、97.4.26

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