ファーンボロ２０００
ファーンボロ２０００
華麗な飛行演技と開発計画の進展
ファーンボロ航空ショーの事務局から８月11日付けの「ニュース・レリーズ」が送られてきた。今年はビジネス取引の上で史上最高の成功をおさめたという内容である。それによるとファーンボロで発表された取引高は520億ドル（約5.7兆円）に達し、２年前のファーンボロでの受注高267億ドルの２倍、４年前の120億ドルの４倍以上になったらしい。入場者数は、トレードデイの５日間が170,000人、最後のパブリックデイが２日間で133,000人。合わせて303,000人であった。
展示者は世界30か国から1,287社（団体）。航空機は13か国から167機。うち88機が地上展示、46機が飛行展示、33機が地上展示をしながら飛行も見せた。
以下に、先の本頁速報につづいて、ショーの一部をご報告する。
テレビの天気予報。「今年の夏は異常です。ここ10年来最も寒く、夏というのにアイスクリームよりも暖かいスープが恋しくなります……」。海岸の籐椅子に寝そべって、そうしゃべっているアナウンサーも、水着ではなく長袖の厚着をして、腰から下には毛布をかけている。
うだるような東京からやってきて信じられないような光景だが、そんな寒い夏のロンドンで、ファーンボロ航空ショーは１週間の幕を開けた。７月24日のことである。これまでは例年９月の開催が今年から７月下旬になったのは、１年おきに交互に開催されるパリ航空ショー（６月開催）とのバランスを取ったもの。
今年のファーンボロで見聞した話題を筆者なりに整理すると、大きく３つにまとめることができる。�／靴靴こ�発計画の進展、��大量注文ラッシュ、�９匐�界の世界的再編である。
もうひとつショーの２日目、超音速旅客機コンコルドがパリ郊外で墜落するという好ましくないおまけもついて、３日目の朝はショー会場に掲げられた参加各国の国旗が半旗になった。
Ａ3XXに正式の発注表明
新しい開発計画の進展は、最大の話題がエアバスＡ3XX超巨人機。ファーンボロではエミレーツ航空、エールフランス、国際リース・ファイナンス（ＩＬＦＣ）の３社から合わせて22機の発注意向が表明され、年内の開発着手がいっそう確実になった。内訳はエミレーツからの発注が確定７機、仮５機で、確定７機のうち２機は貨物機。続いてエールフランスも確定10機、仮４機の発注意向を表明、ＩＬＦＣは５機の購入を表明した。
エアバス社としては確定受注見こみが40〜50機になったところで、107億ドル（約1.1兆円）をかける開発作業に着手することにしている。３社のほかヴァージン・アトランティック航空、シンガポール航空、カンタス航空などとの間でも具体的な交渉が進んでいて、追加50機の受注は確実という。量産機の引渡しは2005年末からはじまり、初号機を受け取るのはエミレーツ航空である。
Ａ3XXについては本誌８月号に詳しいが、エミレーツ航空向けのキャビンは655席。2006年２月に受領してデュバイからボンベイ、バンコク、マニラのほか、特にロンドン・ヒースロウのようなスロット枠の窮屈な混雑空港へ飛ばす計画。またエールフランスはパリからニューヨーク、マイアミ、東京、ロサンゼルスなどへの定期運航を計画している。
こうしたエアバス社の動きに対して、ボーイング社はことさら余裕のある態度を見せつける。現用747のストレッチだけでＡ3XXに匹敵する機材の開発が可能であり、開発期間もそんなにかからない。１年くらい後から着手しても2005年の就航に間に合うというのである。
それにしても、対抗策としてどのような機材をぶつけるのか。最終的には顧客の意向にしたがうこととなるが、当面４種類の機材が考えられている。ひとつは「747Ｘストレッチ」。747-400の胴体を9.6ｍ引き延ばして、最大522席とするもの。-400よりも100人ほど多くなり、亜音速の民間機としては最速のマッハ0.87で14,000ｋｍを飛ぶことができる。
これを貨物専用にする「747Ｘストレッチ貨物機」は今の747-400Ｆよりも23％増の150トンという貨物搭載量になる。
３番目の対抗策は「747Ｘストレッチ・ドメスティック」。近距離区間を目的とするもので、燃料搭載量を減らし、その分だけ乗客数を増やして最大660人乗りになる。第４の「747Ｘ」は、現用747-400の胴体に高速・長距離用の主翼を組み合わせるもの。乗客430人をのせて16,600ｋｍを飛べるので、シンガポール〜シカゴ、ニューヨーク〜クアラルンプール、ロサンゼルス〜シンガポールなど米国と東南アジアをノンストップで結ぶことができる。
Ａ400Ｍ輸送機も具体化
新しい大型軍用輸送機、Ａ400Ｍ四発ターボプロップ機も現実味を帯びてきた。ファーンボロでは、欧州８か国の国防相がそろって同機に対する調達意向を表明し、開発と生産を担当するエアバス・ミリタリー社は少なくとも225機を確保したもよう。国別の内訳はベルギー７機、フランス50機、ドイツ73機、イタリア16機、スペイン27機、トルコ26機、イギリス25機、ルクセンブルク１機。金額にして160億ドルに相当する。これにより今年中に開発着手を決定、2007年の実用化をめざすという。
本機は別表に示すように、最大離陸重量130トン、最大ペイロード37トン、兵員120人をのせ、マッハ0.68の巡航速度で4,500ｋｍの航続性能を持つ。離着陸距離は搭載量や気象条件によって異なるが、ほぼ1,500ｍ前後。地面のやわらかい不整地でも発着できる。
エンジンは出力9,000shp以上のターボプロップが４基。候補にあがっているのは西側世界最強のターボプロップ、スネクマＭ138（13,000shp）。コアになるのはラファール戦闘機のジェット・エンジンＭ88である。これに対してロールスロイス社もＢＲ700をコアとするＢＲ700ＴＰを提案している。
こうしたＡ400Ｍの用途は、たとえば中東の一角で地域紛争が起こった場合、5,500ｋｍ離れた欧州中心部から50機のＡ400Ｍを動員、15日間で620回の往復飛行をして兵員7,200人、車両2,500台、ヘリコプター23機などを送りこみ、紛争の鎮圧に当たることができるという。
また、2,700ｋｍ離れた北アフリカのどこかで多数のヨーロッパ一般市民が人質にとられ、殺害の危険が生じたような場合、16機のＡ400Ｍは現地上空から低空で救援物資を投下し、560人の兵員や20台の車両をパラシュート降下させて救出作戦をおこなう。そして４日目には２機を現地に着陸させ、６〜７日目には救出された人質をのせて戻ってくることができる。
さらにインドネシアのチモールで台風のために大きな災害が発生したような場合、欧州から20機のＡ400Ｍに救援物資やヘリコプターを搭載して長駆16,500ｋｍを飛ばし、12日間で4,500人を救出することも可能。
(Ｃ-17）
ユーロファイター本格量産へ
ファーンボロ・ショーの会場では連日、豪快で華やかなデモンストレーション飛行が展開された。主な登場機は、旅客機がＡ340-300、Ｄｏ328JET、エムブラエルＥＲＪ-145、-140、-135。ほかにＣ-17Ａ輸送機、Ｂ-1Ｂランサー爆撃機、サーブ340早期警戒機、アパッチ攻撃ヘリコプター、グロブ115Ｅ軽飛行機、アレキサンダー・シュライハーＡＳＷ24グライダーなどだが、何といっても観客を圧倒するのは戦闘機である。
ユーロファイター、サーブ・グリペン、Ｆ/Ａ-18Ｅ/Ｆスーパーホーネット、ロッキードＦ-16、スホーイＳｕ29などが轟音をとどろかせて飛び交い、最後に英空軍のレッドアローズが９機のホーク・ジェット練習機で赤、青、白の煙を曳きながら華麗な編隊曲技を見せてくれる。
（スホーイ戦闘機）
この中でユーロファイターは、いよいよ本格的な量産に入るところだけに、繰り返し登場して気合いの入った演技を見せた。
ユーロファイター・タイフーンはイタリア、イギリス、スペイン、ドイツの４か国が共同開発した戦闘機である。その特徴は軽快・敏捷な運動性を持ち、「スイング・ロール・コンバット」機と呼ばれるように、広範・多様な任務に応じられる。具体的には長時間の哨戒から格闘戦、全天候邀撃、対地攻撃など。
原型１号機（ＤＡ１）の初飛行は1994年３月27日、ドイツＤＡＳＡのマンヒン工場でおこなわれた。つづいて２号機（ＤＡ２）が同年４月６日、ＢＡｅ社のウォートン工場で飛んだ。３号機（ＤＡ３）は1995年６月イタリアで飛んだが、この機体には初めてユーロファイターのために開発された新しいＥＪ200エンジンが装着されていた。そして４号機はイギリス、５号機はドイツ、６号機は初めてスペインＣＡＳＡ社で1996年８月に飛び、７号機は1997年イタリアで飛んだ。
この７機の試験飛行の結果、1998年４か国で合意された調達機数はイギリス空軍が232機、ドイツ空軍180機、イタリア121機、スペイン87機で、総数620機。軍用機としては冷戦終了後最大規模のプログラムとなった。
そのうち第１期生産分148機については、98年９月18日670億ドルの固定金額で生産がはじまった。今年９月８日にはＢＡＥシステムズのウォートン工場で量産１号機の最終組立てに入り、ドイツやイタリアでも来年春から最終組立てがはじまる。
韓国もユーロファイターに関心
こうしたユーロファイター戦闘機は４か国以外でも採用される可能性が高い。その販売促進に当たるのはユーロファイター・インターナショナル社である。
同社は先ずギリシアから60機の注文を見こんでいる。ただしギリシアでは現在Ｆ-16が使われており、ロッキード社から同機の性能向上の提案があるため、それとの競争になった。この秋には結論が出る予定。
ノルウェー政府もユーロファイターに好意をもっている。が、議会が国防予算を制限しているため、なかなか具体化できない。そこへ再びＦ-16廉価版の売りこみがあって、両社の競り合いになっている。
オランダはユーロファイターの部品製造にもかかわっている。そのため同機を購入する可能性も高く、すでに６月に見積提案が出された。決定は2001年初めに出ると見られる。競争相手は、ここでもＦ-16のほか、ＪＳＦやスーパーホーネットで、米国政府が強力な政治的圧力をかけている。さらに欧州からも仏ラファール戦闘機やスェーデンのサーブ・グリペンが提案されている。オランダとノルウェーの採用が決まれば、欧州では６か国がユーロファイターを使うことになり、欧州諸国を結びつける標準的な戦闘機となる可能性も大きい。
韓国もユーロファイターには強い関心を持っている。すでに昨年12月、同機の評価試験飛行をおこない、６月にはユーロファイター側から正式提案を受けた。この中には韓国企業による部品製造や韓国における最終組立など技術移転の提案も含まれる。結論は2001年に出る予定で、当面40機の調達が見こまれている。
アジアではシンガポールやオーストラリアもユーロファイターに関心を寄せている。シンガポールは2001年に評価試験をする予定だし、オーストラリアは現用Ｆ-111やＦ-18の後継機として、2006年からの採用が考えられる。またサウジアラビアも来年、評価試験をする予定。
こうしてユーロファイター・インターナショナル社は、ユーロファイター級の戦闘機について世界各国で今後800機くらいの需要があると見ている。そのうち半分の売りこみに成功すれば400機、３分の１ならば250機程度の輸出が見こめるという。
なお、ドイツとイタリアはユーロファイターの一部を複座にすることを検討している。同機の広範な役割からしても、乗員を２人にした方が作戦遂行能力も高まるという考え方である。ドイツの場合は180機の調達予定のうち40機を複座にしたいという。イタリアも121機の調達機数に加えて、10機の複座機を購入する考えだが、英空軍は今のところ複座の考えはない。
初飛行せまったＪＳＦ
ユーロファイターに対して、ロッキードＦ-16は初飛行から四半世紀を経て、今なお売れている。今年になって半年間の受注数は200機以上で、ファーンボロでは韓国から20機、シンガポールから20機の注文が発表された。これで韓国の発注したＦ-16は160機になり、大半は韓国内でライセンス生産されている。
なおＦ-16戦闘機は、これまで4,000機以上が生産され、現在の受注残高は240機。今後も400機の販売見こみが立っており、今年中にタイから16機の注文が出る予定とか。
いっぽう未来の戦闘機は、いよいよ初飛行がせまった米ジョイント・ストライク・ファイター（ＪＳＦ）である。2008〜2010年頃の実用化をめざして、ボーイングとロッキード・マーチンの両社が競争開発をすすめている。ファーンボロには双方ともに実物大のモックアップをもちこみ、その特異な姿を初めて公開した。
ＪＳＦは米海軍、空軍、海兵隊、それに英海軍と空軍向けに開発中の次世代戦闘攻撃機である。開発の重点は戦闘能力と同時に経済性にも置かれていて、開発コスト、生産コスト、運用コストの全てが安くなるよう、機体の調達価額には一定の制限が設けられている。
たとえば、通常の滑走離着陸をおこなうＣＴＯＬ機は、現用戦闘機よりもはるかに安い2,800万ドル程度（約30億円）でなければならない。また短距離滑走で離陸し、垂直に着陸するＳＴＯＶＬ（Short Takeoff and Vertical Landing）機としては3,500万ドル、空母搭載用のＣＶ機としては3,800万ドル以下とし、しかも各機種の間には70〜90％の共通性がなければならないというのである。
こうした３種類のＪＳＦは、最大離陸重量が表２に示すようにいずれも約50,000ポンド。ペイロードはＣＶ機が17,000ポンドだが、他は13,000ポンド以上となっている。
ショー会場に展示されたボーイングＪＳＦ、Ｘ-32のモックアップは、まことに奇妙な形状で、誰かが未完成ではないのかと言ったほど。どこか宇宙船に似たところもあり、果たして空気中を飛べるのだろうかという疑問すらわいてくる。おまけに、このモックアップは狭くて薄暗い小屋の中に置いてあり、しかも左半分はＣＴＯＬ型、右半分はＳＴＯＶＬ型だから、ますます複雑に見える。
ＳＴＯＶＬは翼が短く、先端が厚い。その中に15,000ポンドの燃料のほとんどを積みこむ。翼の材質は構造部分がチタン、外板は複合材である。スパンは９ｍほどしかない。
２種類の垂直飛行方式
ＪＳＦ最大の課題は超音速性能と垂直飛行能力の切換えである。ボーイング社は「ダイレクト・リフト」と呼ばれる方式で、エンジン・ノズルの向きを変えることでこれを実現しようとしている。それに対しロッキード社の方は垂直飛行のための「リフト・ファン」を別個に取りつけ、エンジンにつないでいる。
こうした垂直飛行方式について、双方それぞれに自らの利点を強調し、構造が簡単、重量が軽い、リスクが少ない、切換え反応が速いといった特徴をあげている。同時に両社とも開発の結果は軍の要求を超えた能力を持つに至ったとしている。
ＪＳＦはおそらく、本誌が出る頃には初飛行をするであろう。ファーンボロの時点で、ボーイングＸ-32Ａはすでに地上走行試験を終わり、３週間以内に飛行すると報じられた。これに続いて２機目の空母搭載型Ｘ-32Ｃも飛び、この２機で一連の試験飛行をしたのち、１号機をＳＴＯＶＬ型に改造してＸ-32Ｂとして今年末にも飛ばす予定。
Ｘ-32Ｂのパワード・リフト・システムとエンジンは、ＳＴＯＶＬ飛行を想定した試運転がすでに300時間を超えた。この中で220回の遷移試験がおこなわれ、いずれも成功したという。そして機体が飛びはじめたならば３か月くらいで通常飛行から垂直飛行への遷移飛行をする計画である。
ロッキードＸ-35の試験飛行もほぼ同じような日程でおこなわれるが、ＳＴＯＶＬ型のＸ-38Ｂは来年初めに飛ぶことになっている。
こうしてファーンボロのショー会場では、両社の対決機運が盛り上がった。これを「真昼の決闘」と呼んだ人もいる。ボーイング社は「ＪＳＦ計画は向こう40年間にわたるわが社の戦術航空機の死命を制する」と語った。ロッキード社も「次世代の戦闘機は２〜３種類しか残らない。その一つがＪＳＦであり、その製造契約が得られなければ、会社の存亡にかかわる」と、緊張の色を隠さない。
こうした二者択一の競争の結果、負けた方はどうなるのか。かつては敗者が勝者の下請けになって、結局は勝っても負けても同じようなものという見方もあった。しかし、ここにきて米国防省はそうした安易な道は許されない。「勝者が全てを取る」と強調している。
戦闘機のメーカーとして、ロッキード社は現在Ｆ-16が主力であり、ボーイング社はＦ/Ａ-18Ｅ/Ｆが主力である。しかし、これらの生産がどこまで延ばせるか。遅くとも2010年頃までには終わるであろう。そのとき次のＪＳＦを生産していなければ、戦闘機メーカーとしての寿命も終わってしまう。ＪＳＦの開発競争が「ヘビー級の死闘」といわれるゆえんである。
最終的な調達機数は、いまの米、英の計画だけで約3,000機。他国への輸出が実現すればさらに増えるであろう。
リージョナル・ジェットの進展
ファーンボロ・ショーでの新しい計画の進展は、大型旅客機や軍用機だけにとどまらない。リージョナル・ジェットについては、ボンバーディアＣＲＪ-900の開発着手、エムブラエルＥＲＪ-145ＸＲの開発着手、６月27日に初飛行したばかりのＥＲＪ-140（44席）の登場、新生アライアンス・エアクラフト社のスターライナーが450機の大量注文を得て一挙に浮上したことなどの話題があった。
さらにエムブラエル社のＥＲＪ-135を基本とする新しいビジネス・ジェット「レガシー」の開発計画も忘れてはなるまい。同機はすでに確定25機、仮25機の注文を受けている。
こうした中で、ボンバーディアＣＲＪ-900リージョナル・ジェット（86席）の開発着手はファーンボロ・ショーの初日に発表された。これに伴い同機は34機の確定注文を受けた。内訳は仏ブリットエアから４機、オーストリアのチロリアン航空から12機、スペインのエアノストラムから８機、米ＧＥＣＡＳリース会社から10機である。
ＣＲＪ-900はＣＲＪ-700（70席）のストレッチ型で、-700は間もなくカナダ政府の型式証明が取れる予定。一方-900は来年なかばに初飛行し、2002年秋に型式証明を取る予定。
ボンバーディア社はかつて、全く新しい大型リージョナル機、ＢＲＪ-Ｘ-90やＢＲＪ-Ｘ-100を計画していた。しかし、これらＢＲＪ-Ｘの開発は費用も時間もかかるところから、ＣＲＪ-700の胴体を3.6ｍ延ばすだけにしたもの。これで左右４席の座席が前後４列増えて16席増の86席になる。開発費は５分の１程度、１億3,500万ドル程度で収まり、時間もかからない。それだけ競争相手のＥＲＪ-190やドイツのドルニエ928JETに対する競争力も高まるというわけである。１機あたりの価格は2,900万ドル。
エンジンはＧＥ ＣＦ34-8Ｃ５が２基。最大離陸重量は37,400ｋｇ、最大ペイロード10トン。巡航速度マッハ0.77。最大マッハ0.81。航続距離3,200ｋｍである。
一方、フェアチャイルド・ドルニエ社は同じ90席クラスの928JETの設計仕様を改めると発表した。当初は728JET（70席）を単純にストレッチする考えだったが、主翼を大きくして、新しいＣＦ34-10Ｄターボファン・エンジン（推力7,700ｋｇ）２基を装備する。728JETはＣＦ34-8Ｄ３エンジン（5,670ｋｇ）だから、36％の出力増になる。
これはＢＲＪ-ＸをＣＲＪ-900にしたボンバーディア社とは逆の行き方で、どちらかといえばエアバスＡ318やボーイング717の方に近くなる。それでも運航費は728JETにくらべて25％増になるだけで、Ａ318の46％増、717の41％増にくらべてかなり安いという。
しかし、ストレッチよりも開発時間がかかるため、初飛行は2003年末、型式証明は2005年初めになる。巡航速度はマッハ0.8。航続距離2,824ｋｍ．最大離陸重量47,500ｋｇ、最大ペイロード11,750ｋｇ。これまでにババリア・エアクラフト・リース会社から４機を受注。ＧＥＣＡＳリース会社からも仮注文を受けている。
ＥＲＪ-145ＸＲとレガシー
もうひとつのリージョナル・ジェット・メーカー、ブラジルのエムブラエル社からはＥＲＪ-145ＸＲの開発計画が発表された。同機は出力強化型のロールスロイスＡＥ3007Ａ１Ｅターボファン（推力3,450ｋｇ）２基を装備、出力が７％増加して高温・高地性能が向上する。また主翼先端にウィングレットをつけ、燃料タンク容量も大きくなり、航続距離は3,700ｋｍに伸びる。初飛行は来年春の予定。
このＥＲＪ-145ＸＲを米コンチネンタル・エクスプレスは75機発注した。そのうち64機はかねて仮発注していた-145を確定発注とし、ＸＲに切り替えたもの。残り11機も-145の確定発注を変更したものである。コンチネンタル・エクスプレスは現在80機のＥＲＪ-145を運航しているが、新しいＸＲは2002年８月に受領する。同航空は現在総数275機のＥＲＪ機を確定発注している。
エムブラエル社からはもうひとつＥＲＪ-135（37席）を基本とする新しいビジネス・ジェット「レガシー」の開発計画が発表された。エムブラエル初のビジネス・ジェットである。エンジンはＥＲＪ-145（50席）と同じロールスロイスＡＥ3007Ａ１Ｐ。これで出力が強化され、離着陸性能が良くなる。また主翼先端にはウィングレットが取りつけられ、ゆったりしたキャビンに乗客８人をのせ、マッハ0.78の巡航速度で1,730ｋｍの航続性能を持つ。型式証明は来年８月までに取る予定。
価格も1,900万ドルと安く、米スイフト航空が確定25機、仮25機の発注をした。来年９月に１号機を受領する。
（ロンドン市内の地球博物館でおこなわれたレガシーの発表会）
以上が冒頭に書いた新しい開発計画の進展に関する話題である。したがって大量注文ラッシュや世界の航空界の再編など、「ファーンボロ2000」の話題はまだまだ尽きないが、紙数が尽きた。あとは来月号で報告いたしたい。
（西川渉、『航空情報』2000年10月号掲載）
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