消防パイロット・マニュアル
消防パイロット・マニュアル
『ヘリコプターによる消火活動と安全』を読む
ここにご紹介する『ヘリコプターによる消火活動と安全』（Helicopter Fire Fighting and Safety）は、ロサンゼルス・カウンティ消防局のシニア・パイロット、アラン・マクロード機長の執筆になる飛行マニュアルである。新人のヘリコプター・パイロットに渡されるもので、わが国ベテラン・パイロットにとっては充分ご承知の内容かもしれない。しかし敢えてそれを取り上げるのは、パイロット以外の地上職または事務職の消防関係者の皆さんに、パイロットが消火活動にあたってどのような飛行操作をおこない、安全上の注意を払っているかを具体的に知っていただきたいからである。
今後わが国でもヘリコプターによる消火活動がいっそう盛んになるためには、有効かつ安全な飛行がおこなわれなければならない。それには飛行職と地上職との間に十分な相互理解と深い信頼関係が必要である。本書がそのための一助、もしくはご参考にならぬかと思いご紹介する次第である。
分量は細かい英文字でＡ４版32頁。全体の構成は下表目次の通りだが、紙数の関係で第６章の核心部分を中心に取り上げることとしたい。
『ヘリコプターによる消火活動と安全』目次
|
ロサンゼルス・カウンティ消防局
最初にロサンゼルス・カウンティ消防局（ＬＡＣＦＤ）について少し説明が必要かもしれない。ＬＡＦＣＤはロサンゼルス市消防局とは異なる。ロサンゼルス市内を除く周辺の広大な地域を管轄し、北東部に広がるモハーベ砂漠から南の山岳地帯や西の海岸線、さらには洋上50ｋｍの島々に及ぶ。したがって自然環境の変化も大きく、炎熱の砂漠から酷寒の山岳地まで含まれる。ロサンゼルスといえば冬でも春のような陽光が降り注ぐ暖かくて穏やかな土地柄という印象が強いが、実態はむしろ逆である。
とりわけ消防活動という観点からすれば、夏の乾季に発生する「サンタアナ」と呼ぶ熱風が手ごわい。このときは必らずといっていいほど林野火災が起こる。しかも、いったん火の手があがると、火炎は風速30ｍの強風にあおられ、灌木の茂みを伝わってまたたく間に燃え広がる。その範囲は平原から林野、山腹、さらには住宅地に達し、真っ赤な火炎は上空60ｍまで吹き上がる。そのため消防車だけでは間に合わず、多数のヘリコプターが出動しなければならない。
ＬＡＦＣＤの保有するヘリコプターは偵察用のベル206小型ヘリコプター１機を初め、中型のベル205Ａ１が３機、412が４機など。しかし、これだけでは不充分というので、夏季にはエリクソン・ヘリコプター社のＳ-64エアクレーン大型機（水搭載量7.5トン）やカナディアＣＬ-415消防飛行艇（水搭載量６トン）を２機ずつチャーターし、水を満タンに搭載して、いつでも出動できるよう待機している。それでも間に合わないときは周辺各地の消防ヘリコプターや警察ヘリコプターの応援を受け、軍隊の出動を要請することもある。
同僚の命を奪うな
さて、本書は「まえがき」に消火活動に不慣れのパイロットに向けての基礎的なマニュアルであると断ってある。しかし、いうまでもないことだが、ヘリコプター・パイロットとしては経験豊富なベテランであっても、最近まで軍用機で飛んでいて、消火活動はしたことがないというような人は消防パイロットとしては初心者である。したがって、そういう人もこのマニュアルの対象であることはいうまでもない。
そうした初心者向けに、このマニュアルはごく基礎的なこととして、火災の特性、消火活動の戦術と技術、そして何よりも安全確保の問題について述べている。「安全はいかなる場合にも確保されなければならない。万一間違いが起これば、パイロットとしての生命が失われるだけでなく、一緒に仕事をしている同僚の命も奪うことになる」とまえがきはいう。
その間違いを起こさぬためには、どのような心構えが必要か。「林野火災は気象、地形、植生によって無限の変化をする。したがって消火活動や飛行操作の方法は１回ごとに異なる。そのためパイロットは的確な判断力を身につけ、たゆまぬ研鑽が必要である」
「消防パイロットは全員が山岳飛行に慣れ、強風や乱気流の中での飛行に熟達しなければならない。山間部の複雑な地形の中で、風がどのように吹くかを理解することが山林火災に対応する消防飛行の最も基礎的な条件である」
「消防パイロットは火災に関する知識を持たなければならない。そして空中消火と地上消火の両方について、消火活動のやり方を知らなければならない」
「機長は機体と同乗者の安全に関して最終的な責任を持つ。したがって外部からの飛行要請にしたがうか、それを拒否するかは、最終的に機長の権限である。地上の消防隊員も、日頃の経験や訓練によって、消火活動におけるヘリコプターの能力や限界を充分に理解し、無理な飛行要請は避けなければならない」
燃焼の３要素と初期消火
本書の核心部分、第６章「消火戦術」は実際の飛行について、安全を考慮しながら、いかにして火災現場で水を投下するかが示されている。
まず「燃焼の三角形」では「燃焼は、熱、酸素、燃料（可燃物）の三要素から成る。そのうちの一つを取り除くと三角形が崩れ、火事は燃え続けることができない」。たとえばヘリコプターから水をまいたり、地上の消防隊員がホースで水をかけて熱を取り除く。また火に向かってショベルで泥をかけて酸素の供給を止める。もしくはブルドーザーなどで樹木を倒して防火帯をつくれば燃えるものがなくなる。火事は、こうした原理にのっとって消すというのが消防パイロットの基礎知識として示される。
次いで「初期消火」の項では「初期消火は炎が大きくならないうちに、火災の真正面から叩く。ただし安全第一であって、燃焼物、状況、風、地形などを考慮して判断する。火災が大きくなりすぎたときは、側面を叩く」といった方法が示される。
そうした初期消火のために地上の消防隊員をヘリコプターで現場近くへ輸送する場合「着陸地点は火災現場との位置関係と安全を見きわめた上で選定する。このときヘリコプターの安全ばかりでなく、地上に降りた消防隊員の安全も考慮し、火災の広がりが急変したときは直ちに地上隊員が避難できるような避難経路も考慮する。地上隊員に危険がせまった場合は、ヘリコプターは地上隊員を防護するための水を投下したり、近くに着陸して救出する。そのため、ヘリコプターと地上部隊との間には常に無線連絡が維持されていなければならない」
ヘリコプターは地上隊員を降ろしてから、水投下を開始する。水の補給場所はあらかじめ上空から見定めておく。こうしてヘリコプターは地上部隊を支援する形で、繰り返し水投下をおこなう。
水投下の戦術と技術
「水投下の戦術」は、初期消火の段階を過ぎて、本格的な火災への対応策である。まず水投下による消火は「火勢を抑え、消火する目的をもって直接、燃焼物へ水を投下する」。延焼防止は「主として火災の側面、または燃焼方向の先に間接的に水を投下して、延焼を防ぐ。特に地上部隊がいないときの作戦である」
飛び火は火のついた木の葉などが風に飛ばされて発生する。飛び火は「主火よりも先に叩く必要がある。後回しにしておくと小火が大火となり、結果的に二か所の大火を相手にしなければならなくなる」
攻撃目標の選択は火災が大きくなりすぎて、有効な方法がなくなった場合である。そのようなときは「山麓、または火元から攻撃する。そして繰り返し、前の投下地点に重ねて水を投下しながら、少しずつ範囲を広げ、火災の先端へ向かって側面攻撃をしてゆく」
さて、具体的な「水投下の技術」だが、消防ヘリコプターによる水の投下は急降下爆撃機による爆弾投下と同じようなものといえば、大げさに過ぎるかもしれない。けれども「この作戦にはパイロットの的確な判断力が要求される。理想的な水投下は、地面が平らで、電線も煙もないところで、風に正対して、高度50フィート（15ｍ）、速度50ノット（90km/h）でおこなうことであろう。しかし実際の消火では、そんな理想的な条件はほとんどない。といっても、最悪の場所ばかりでもない。現実は理想と最悪の中間の状況下でおこなうことになる」
その中間的な状況を全て列挙することはできないが、本書は�．曠丱螢鵐暗蟆次↓▲�ロス・スロープ投下、�２執濺蟆次淵瀬Ε鵐好蹇璽廖Ε疋蹈奪廖法↓ぞ緇催蟆次淵▲奪廛好蹇璽廖Ε疋蹈奪廖法↓ケ譴留洞漸爾任療蟆爾箸い辰慎蚕僂砲弔い得睫世靴討い襦�その内容は次の通りである。
ホバリング投下は障害物や樹木に囲まれた場所を除いては、やってはならない。「内部まで完全に燃えつきていない場合は、ローターのダウンウォッシュによって却って火勢を強め、場合によっては地上で消火活動をしている消防隊員を危険にさらす恐れがある」
「どうしても障碍物に囲まれた狭い地点を攻撃しなければならないときは、低速飛行で投下するか、バケットを使っていなければクィック・ストップで投下する。速度を落とすときは、その分だけ高度を上げ、ダウンウォッシュの影響が大きくならないようにしなければならない」
山野の面への水投下
次のクロス・スロープ投下とは、山の斜面を横に見ながら等高線に沿って水を投下することで、大きな問題はない。ただし斜面が急な場合は、ローター・ブレードの先端が崖などを叩かないように気をつけなければならない。
下降投下は山の斜面を駆け降りながら水を投下する方法で「斜面がけわしい場合は、あらかじめ火災の上方の尾根に目標物を定め、尾根の背後から現場が見えないままに近づき、尾根を越えたときに煙にまかれないようにして、そのまま斜面を下り降りながら水を投下する」
「斜面が急な場合は、速度を抑えて尾根に接近する。ただし余り速度を殺しすぎると、追い風になったり風の吹き降ろしに遭遇したとき、機首が下って急降下を余儀なくされるから注意しなければならない」
「いよいよ水投下のための降下をはじめるときは、速度が速くなりすぎないようにする。また何らかの理由で、水投下を中止する必要が生じたときは、地面から十分離れて飛行できるよう操縦桿を引き起こす。下降投下は、向かい風で速度が遅いほど効果が大きい」
「下降投下に入るもうひとつの方法は、尾根の背後から近づくのではなく、斜面に沿って横から近づき、90°旋回をして斜面沿いに降下しながら水を投下する方法である。この場合、90°旋回をパイロット側に向かっておこなえば目標がよく見えることとなる。
上昇投下は山の斜面に沿って下から上へ上昇しながら水を投下する方法である。これまでのいくつかの投下方法の中では最も目標が見やすい。けれども「危険度も高いので、斜面が急な場合や火の回りが速いときは取るべきでない。ほかに適当な飛行方法が取れない場合で、しかも絶対に安全が確保できるような場合にのみ実施する。その場合も、十分な注意を払う必要がある」
「水投下の目標である火災現場が、けわしい山の斜面の低い位置にある場合、上昇投下をおこなうには最も熟練した技量と注意深い判断と充分な経験が必要である。したがって初心者にはすすめられない。消火飛行の経験を積んで初めて許される投下方法である」
（ロサンゼルス・カウンティ消防で実用消火試験をするファイアホーク）
上昇投下の危険性
「繰り返しになるが、上昇投下は経験を積んだベテラン・パイロットで、ほかに投下の方法がない場合にのみ実施すべきである。上昇投下の最中に機材の異常が発生したときは、必ずや安全が損なわれると考えておくべきである」
「水投下の目標が斜面の低いところにある場合、ヘリコプターのピッチング姿勢は上方の尾根に向かってまっすぐ安全に上昇できるような状態でなければならない。このような投下状態に入るときは、やや速度をつけ、上昇に転じたときは前進の運動量だけで尾根を越えられるだけの上昇力を保持し、なおかつ途中で中止しなければならなくなったときや何らかの異常が生じたときも、パワーを追加することなく対応できるようでなければならない」
「上昇投下への入り方は、山の斜面に向かって正面から飛んでゆき、そのまま上昇に転じて水を投下しながら尾根に向かう方法と、通常のバンク旋回をパワーを加えることなくおこなう方法がある。これ以外の飛び方で水投下をはじめようとすると、下降気流があった場合は高度が低いままで速度が下がり、上昇力も失われ、対気速度ゼロに近い状態で180°のペダル旋回が必要になり、フルパワーを使う必要が生じて、火勢を強めることにもなる」
「同様に、上昇飛行中、水投下の機構が故障した場合は、パワーセットリングに陥って、必ずや事故に至るであろう」
消防パイロットは上に述べたようないくつかの水投下の方法の中から、その時どきの状況に応じて、いずれかを採用し、実施する。その時どきの状況とは、いくつかの要件があって、たとえば「風向風速、火勢の強さと方向、一般的な地形の特徴、そして斜面の傾斜の度合いである。これらの要素は、それぞれ火災ごとに異なるから、組み合わせは無限に変化する」
「さらに、もっと大きな変化があるのは煙のパターンである。おそらく煙の状態こそは、火災現場でどの水投下の方法を採るかを決める最大の条件となるであろう」
「たとえば、ひとつの目標に連続して水投下をする場合、常に変わらない要素は地形だけである。ほかの要素は刻々に変化し、最も大きな変化をするのが煙のパターンであろう。煙は、おそらく現場の周囲で渦を巻き、攻撃の方角も180°の変化を必要とするであろう。あるいは下降投下をしていた作業が、途中から目標が煙の中に隠れてしまって上昇投下に変えざるを得なくなるかもしれない」
バケットによる水投下
次に本書は「バケットによる水投下」について説明する。「ヘリコプターの水投下用バケットは草地、雑木林、山林の至るところの火災に広範囲に使われている。バケットはヘリコプターの機体下面に吊り下げられる。取り外しが容易なので、ヘリコプター自体は多目的に使うことができる。また購入価格が安く、取りつけが容易で、万一のときは空中で切り放して落とすことができる。湖水や河川でも水を汲み上げて使うことができる」
しかしまた「バケットには欠点もある。最大の問題は機外吊り下げのため、ヘリコプターの操縦操作性が悪くなる。またバケットを吊り下げている分だけ、機体は高い位置にとどまっていなければならず、離陸時の地面効果が低下して、離陸性能が悪化する」
「さらに抵抗が大きくなるので、ヘリコプターの飛行速度に影響し、消火作業中に水を汲み上げて現場へ戻ったり、現場から水源へ行くときも速度が出せない。そして基本的には、機外吊り下げ飛行のため、パイロットには高い技量が要求される」
「パイロットの疲労も大きくなる。機体下面にタンクを取りつけている場合、水の注入はヘリコプターが着陸してホースをつないでおこなわれるので、その１分ほどの間にパイロットは心身を休めることができる。しかしバケットの場合は水の上でホバリングをしながら、バケットを水中に入れて水を汲み上げるので、パイロットの休む暇はない」
このようなバケットを使う場合の飛行要領は、次の通りである。バケットを取りつけて離陸する場合は「ホバリングをしながら、静かにバケットを地面から引き上げる。同時にケーブルが引っかかっていないか、スキッドにからまっていないかをチェックする。これはバックミラーを使ったり、ドアをあけたりして目視によってチェックすることができる。また地上のシグナルマンにチェックを依頼し、善し悪しの合図を送ってもらうのもよい」
バケットを吊り下げて離陸した後は、まず「近くの水源へ飛び、水面に近づいて、ゆっくりと前進しながら、バケットを水につけ、わずかに引っ張る。バケットに水が満たされたならば、底を閉じてエンジン出力を上げ、バケットを水面から引き上げる。それからさらに前進飛行をつづけ、揚力をつけていく。この間の動きがなめらかであれば、必要馬力は少なくてすみ、フックやヘリコプターにかかる力も少なくなる」
このような「水面への接近、水の汲み上げ、離昇といった一連の飛行は、わずかに練習するだけで、瞬時も停滞することなく、無理なく円滑にできるようになる」
固定タンクによる消火
次に本書は、固定タンクによる消火について説明している。ＬＡＣＦＤの固定タンクは最も広く普及しているものだが、やや旧式で、ハイスキッド装備のベル204、205、212、214、412などの下面に取りつけられる。容量は350ガロン（1,300リッター）。給水はヘリコプターが着陸した状態で、地上ポンプからのホースをつなぎ、タンクに水を送りこむ。したがって最近の吸水用シュノーケルがついたタンクとは異なり、離着陸や給水についても特別な飛行方法を取る必要はない。
すなわち固定タンクをつけたヘリコプターは基本的に普通の状態と変わりがない。したがって地面効果内の離陸ができるので搭載量のロスもなく、振動が少なく、水源と火災現場との間で高速の往来ができる。またヘリコプターの運動性や操作性にも影響が少なく、強風の中でも作業ができるし、障害物からの高さの判定も容易。少し慣れたら正確で迅速な水投下も可能というのが本書の説明である。
本書は、これらの特徴を表２のように整理している。ただし殊更に、どちらが良いといっているわけではない。
ＬＡＣＦＤによる水バケット対タンクの比較
|
|
|
|
|
購入価格が安い |
|
|
|
ヘリコプターへの取りつけが容易 |
|
|
|
他のカーゴスリング作業へも転換が容易 |
|
|
|
空中での切り放しが可能 |
|
|
|
湖水や川面での給水が可能 |
|
|
|
高い運動性を保持 |
|
|
|
地面効果内の離陸とホバリングが可能 |
|
|
|
振動が少ない |
|
|
|
現場と水源との間で高速飛行が可能 |
|
|
|
突風の中でも消火作業が可能 |
|
|
|
障害物からの高度判定が容易 |
|
|
|
投下の精度が高い |
|
|
安全は全員で支える
最後に蛇足をつけ加えると、このマニュアルは空中消火における操縦操作の要領を示すだけでなく、安全上の問題を説いたものである。飛行の安全を考えると、危険だと思ったときは飛ばないことが最も確実な安全対策かもしれない。しかしアマチュアの趣味の飛行ならばともかく、プロの消防飛行は危険を避けてばかりはいられない。
その危険に立ち向かうために、あらかじめどのような組織体制をつくっておくか。どのような準備と連絡調整をすればいいか。どのようなことに注意して飛べばいいか。そうした注意事項をＬＡＣＦＤの新人パイロット向けに示したものである。
この基礎の上に立って、あとは「各自の研鑽と経験によって安全を高めてもらいたい」と本書は説くが、安全はパイロットだけのものではない。私がここで強調したいのは、事故発生の最後の引き金を引くのは確かにパイロットである場合が多い。けれども、彼をそこまで追いこむのは、しばしば周囲の関係者である。飛行の安全には関係ないように見える地上職員でも、実はちょっとした連絡の遅れが事故の遠因になったりすることもある。
その意味で、ヘリコプターなど乗ったこともないような事務職員といえども、空中で何がおこなわれているか、どんな危険が待ち構えているか、どのように対処すればいいかなどを理解しておくことは、きわめて重要である。
昔からサーカスの芸人と飛行機の操縦士と、それから消防士は危険な職業のトップ・スリーとされてきた。生命保険の掛け金なども、最近は知らず、かつては割増し金を払わねばならなかった。とすれば、消防パイロットは危険な職業の二つを兼ねているようなもので、しかも山の斜面に沿ってサーカスのような飛行をするのだから、三つ目の危険も加わる。まさに、これ以上の危険な仕事はないといってよいであろう。
それほどの危険を冒しながら、敢然として飛ばなければならないのが消防飛行である。その安全は、パイロットを頂点として、関係者の全員で支えなければならない。
（西川渉、全国航空消防防災協議会編『はばたき』2000年６月号掲載）
（表紙へ戻る）