<小言航兵衛>

開かずの踏切を開ける法

 

 中央線武蔵境駅ふきんの踏切がなかなかあかないので問題になっている。とうとう首相までが担当大臣に「知恵を出すように」という丸投げ指示を出したという。しかし、その指示から1週間もたって依然問題が解決しないのは、知恵がないからである。

 なぜ知恵が出ないのか。電車優先の前提を変えないからである。これでは歩道橋の建設や迂回路くらいの知恵しか出ない。電車の方をお構いなしに走らせていては、踏切はあかない。一般通行人と車はひたすら待つだけになってしまう。

 なぜ電車が優先するのか。公共交通機関だからである。けれども、公共は個人に優先するというのは社会主義的な考え方である。社会主義である限りは、そこから先へ進まない。

 では民主主義的な考え方をするとどうなるか。電車も車も通行人も平等である。といって個々人が勝手なわがままを言ってよいというのではない。そんなことをすれば社会の秩序が保てない。相互に相手の権利を認め、少しずつ譲ればいいのだ。

 つまり、踏切を普通の交差点にするのである。道路と線路の両方に赤と青の信号をつけ、線路の方に赤信号が出れば電車にも止まって貰う。むろん普通の道にも優劣があって、信号が青になる時間は交通量の多い優先道路の方が長い。踏切の場合も、電車の青の方がやや長くなるのはやむを得ないだろう。

 けれども、たとえば5分後には必ず遮断機が上がる。そのことがはっきりしていれば待つ人の方もいらいらせずにすむし、それ以上長く待つことはない。現状は遮断機がいつ上がるか分からない上に、何十分も待たされるから問題が起こるのである。

 ようやく開いた踏切に人と車が殺到する。それらが渡り切らないうちに遮断機が閉まる。踏切の中に取り残される人も出て危険な状態になる。すでに、この1〜2か月で45件も電車の緊急停止があったというではないか。緊急停止をするくらいなら初めから止まるようにしておけばいいのだ。

 昔は上の写真にあるように、電車も車も人も、たまにしか通らないのどかな踏切だったのであろう。しかし交通量が急増した今、量的な変化に対応するには質的な変化が伴わなければならない。すなわち立体交差である。しかし、それがすぐに実現できないとすれば、中間的な手段として電車の方にも止まって貰わなくてはならない。

 このままでは開かずの踏切を待って無駄な時間と費用がついやされるばかりでなく、無駄な事故が起こり、無駄死にすら起こりかねない。関係者はもっと知恵を出せ、というよりも通行人の立場になって考えるべきだ。

(小言航兵衛、2003.10.29)


(電車が通ります)

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