ビル・ゲイツの霊感ソフト

 

 

 先日の新聞にビル・ゲイツが米国司法省からの告訴に対し、反論を出したというニュスが出ていた。ウィンドウとインターネット・ブラウザを一緒にするのが何故悪いか。ソフトの開発に制限を加えるのはおかしいというもので、私も確かにそうだろうと思う。

 2つのソフトを一緒にして、うまく相性が合っていてトラブルを起こさず、しかも便利になるのであれば、私のようなパソコン素人の利用者にとってはこの上ない福音である。2つどころか、3つも4つものソフトが一緒になろうと、一つのソフトがいくつもの機能をもっていようと、便利でトラブルが起こらなければそれでいい。

  ところが、彼のつくったIE4.0のように、新しくて珍しい機能があって、便利ではあるけれども、こちらのパソコンにまでトラブルをもたらすというのが一番困る。さんざん痛めつけられたあげく、この機械にはまだ後遺症が見られるのだ。

 そんなことを考えているところへ、昨日のことだが、友人からEメールが届いて、本頁のIE4.0のトラブル・レポートを見たけれども、自分も同じようなトラブルを経験したという。そこで、こちらもそれに輪をかけてIE4.0の悪口を書いた。そこまではよかったのだが、いざ発信しようとしたところ、何とインターネット・メールが動かない。「差出人へ」の頁から「送信」ボタンをクリックすると「このフォルダは破損しています」という表示が出るだけなのである。

 あわてて「修復OK」のボタンを押したが「エラー」表示が出るばかり。何度繰り返しても動作が進まない。それから2時間ほどかかってあれこれやってみたが、結局駄目なものは駄目で、修復は諦めざるを得なかった。

 しかし実は、ほんの1時間ほど前に別のメールを送ったばかりなのである。それがIE4.0の悪口を書いた途端、その悪口を送り出すことができなくなってしまった。これが偶然だろうか。何だかビル・ゲイツのソフトには恐ろしい霊感か霊力が乗り移っているのではないかと、冷や汗が流れるのを感じた。

 

 今夜も、昨夜のメール発信を試みたがソフトは壊れたまま。受信はできるのだが、送信ができない。先日の新聞を読んだときは、ゲイツの言い分にも賛同したけれども、こんなことではやはり司法省のいう通りかとも思う。

 ゲイツをやっつけられるような、しっかりした、使いやすいソフトは出てこないのだろうか、などと考えていたところ、今朝になってマイクロソフトの対抗馬と見られたネットスケープ社が不振に陥ったというニュースが報じられた。マイクロソフトとの主導権争いが激化して、急速な業績悪化に見舞われたらしい。

 そのため約300人、全社員の9%に当たる従業員を解雇し、自らも身売りか一部事業部の売却かを検討中。AOLやIBMなど4社との間に交渉を進めているというのである。

 まことにマイクロソフトの霊力は、あな恐ろしやとでもいうほかはあるまい。

(西川渉、98.2.6)

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