<HELI-EXPO 2006>

ベル・ヘリコプター


ヘリコプターの風防を通して見たダラス市街地の高層ビル群

 今年の国際ヘリコプター協会(HAI)年次大会「ヘリエキスポ2006」は去る2月26〜28日の3日間、米テキサス州ダラスで開催された。出展企業または団体は521、地上展示のヘリコプターは48機、参会者は初日だけで14,000人を超え、いずれも従来の記録を上回った。

 ほかに、会場となったダラス・コンベンション・センターの屋上ヴァーティポートでは、さまざまな小型ヘリコプターが見こみ客や報道陣をのせてデモ飛行をおこなった。筆者もユーロコプターAS350B3にのせて貰い、建築デザインのコンペのような高層ビルが林立するダラス市街地を上空から見ることができた。

 以下、コンベンション会場で拾った主な話題を見てゆこう。


ベールを脱いだベル417

 ベル417軽単発タービン・ヘリコプターは、今回のショーで唯一の新規発表である。既存の407を基本とする発達型で、米陸軍の武装偵察ヘリコプターに採用されたARHと同じHTS900エンジン(925shp)1基を装備する。というよりも407をHTS900エンジンで強化してARHとなり、その成功にもとづいて新しい民間機へ衣替えしたというべきだろう。

 しかし単なるエンジン強化だけではなくて、モデル430のローターシステム採用を検討中ともいう。高温・高地での離着陸性能やホバリング性能の向上をはかるためとか。最大速度は260km/h。最大離陸重量は2,500kgで、407よりも110kgほど重い。

 会場に展示されたモックアップは警察仕様で、機体後部にサーチライト、機首下面に赤外線暗視装置(FLIR)がついていた。

 なお417原型機はこの4月に初飛行し、2008年初めに型式証明を取得する予定。基本価格は211万ドル。またARHは昨年7月22億ドル(約2,600億円)で米陸軍との契約が成立、2007年から引渡しがはじまり、2013年までに368機が納入されることになっている。


ベル429

 モデル429双発機は1年前のHAI大会で公表された計画である。417と並んで、モックアップが展示された。原型機は今年秋に初飛行し、ほぼ1年後に型式証明取得の予定。受注数はHAI大会開幕前の時点で149機だったが、このほどCJシステムズ社から確定10機、仮10機の注文を受けた。CJシステムズは航空医療専門の航空会社で、全米およそ80ヵ所の拠点を持ち、救急ヘリコプターと固定翼機を合わせて115機以上を運航中。従業員は約600人。本社はピッツバーグにある。


BA609ティルトローター

 BA609民間型ティルトローター機は昨年7月22日、飛行機モードへの遷移飛行に成功、最近までに高度5,400mで516km/hの速度性能を発揮した。原型2号機はすでにイタリア・アグスタ社に送られ、今年秋までに初飛行の予定。

 なお、われわれは大会3日目の午後、ベル社第6工場XworX(秘密工場エクスワークス)を訪ね、明日の試験飛行にそなえて整備点検中のBA609原型1号機を見せて貰った。前日には、HAI大会に参加した人を招いて、実際に飛んでいるところを公開披露したらしい。その催しを知らずに、見逃したのは残念至極である。


ベル210

 ベル210は軍用UH-1を改良して、昨年7月に民間機としての型式証明を取得。今年5月から引渡しがはじまる。本来は、米陸軍が目下審査中の多用途ヘリコプターLUHに当てる計画だったが、計器飛行ができなければならないという条件がついたためにLUHを断念、民間多用途機として製造されることになった。


ベルTR-918イーグルアイ

 イーグルアイは今年1月に初飛行した無人のティルトローター機。民間機としてもエバグリーン社が調査飛行に使う予定で、1機を発注している。

(西川 渉、2006.3.8)

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