二つの新リージョナル・ジェット計画

 

 

 リージョナル航空のジェット化傾向については、本頁で数日前にご報告したばかりだが、それを裏づけるかのように、このほど相次いで2つの70人乗りリージョナル・ジェット旅客機の開発計画が明らかにされた。

 一つは『Flight International』誌(2000年2月15日号)が報じるアライアンス・エアクラフト社の計画。同社は米ニューハンプシャー州に拠点を置いて、70席と90席の2種類の開発計画をすすめつつあるが、すでに欧州とアジアの航空会社2社から発注意向の表明を受けているという。

 このアライアンス機は主翼下面に2つのエンジンを取りつける極く普通の形状で、下表に示すように1,500m程度の短い滑走路で離陸し、マッハ0.8の高速で゙3,700kmの航続性能を持つ。

 エンジンは70席機が推力6,000kg、90席機が7,250kgの推力を必要とし、ロールスロイスBR700とGE CF34-8が候補にあがっている。主翼は両機種共通。 

要  目

70席機

90席機

全長

26.2m

30.2m

主翼スパン

27.8m

27.8m

キャビン直径

3.4m

3.4m

最大離陸重量

33,710kg

39,270kg

ペイロード

8,170kg

9,990kg

エンジン推力

6,010kg

7,250kg

離陸滑走路長

1,373m

1,525m

巡航速度

マッハ0.8

マッハ0.8

航続距離

3,700km

3,700km

基本価格

1,890万ドル

2,430万ドル

 こうした2種類のリージョナル・ジェットについてアライアンス社は目下設計段階にあり、今年6月に予備設計を終了、2001年2月に最終設計を完成する。そして2002年2月にまず90席機を初飛行させ、その2週間後に70席機を飛ばす。そして2003年3月までにFAAと欧州JAAの型式証明を取得するという。

 開発のための必要資金は6.6億ドル。うち1.5億ドルを自己資金で用意するほか、1億ドルの銀行融資を受ける。残り4.1億ドルはこれから手当をすることになるが、25%に当たる1.7億ドルに関してはリスク負担のパートナーを求めたいとしている。

 なお、将来は90席機を引き延ばして110席機とし、70席機を短縮して55席機とする計画もあるらしい。

 まことに大胆な構想で、その背景に何があるのかよく分からないが、何の実績もない企業が計画着手から2年間で原型機を飛ばし、2機の試験飛行だけで1年後には旅客機としての型式証明を取るようなことが本当にできるのだろうか。

 頭の固いものとしては眉に唾をつけたくなるような話だが、その意気や壮とすべし。YSXの開発に予備調査だけで何年もかけ、ついに石橋を叩いて渡らなかった日本のメーカーに、彼らの意気を煎じて飲ませたいような気もする。

 もうひとつの構想は、これは本物のように思える。といって上の計画が偽物というわけではないが、それというのもボーイング社の計画だからで、かねて規制緩和を背景とするリージョナル航空の将来性に注目していた同社が、いよいよ傍観してはいられなくなったのであろう。みずから70席クラスの航空機の開発に乗り出すというのだ。

 これも『Flight International』誌(2000年2月22日号)のニュースで、現用717を基本として70席機の研究をはじめる。そして今年夏までにリージョナル市場の調査を終え、最終決定をする予定である。

 この計画は717-100Xと呼ばれ、今の717-200に対して胴体を短縮し、エンジンをBR715からBR710に換装する。

 これらの計画が実行に移されることになれば、リージョナル・ジェットの製造競争は今の三つ巴から四つ巴、五つ巴になる。リージョナル航空界も、そうした競争によってますます活気づくであろう。

 現に日本でも、新生フェアリンクが今年夏から仙台を拠点に2機のCRJを使って定期運航を開始するようだし、日本航空の子会社ジェイエアも2機のCRJを発注したとか。リージョナル・ジェットの波が近づいている。

(西川渉,2000.2.27)

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